研究課題/領域番号 |
26760010
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
日下部 尚徳 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (60636976)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サイクロン / バングラデシュ / 災害復興 / 貧困 |
研究実績の概要 |
本研究の骨子は、バングラデシュのサイクロン常襲地域において、住民が被災後に抱える生活再建課題と、課題への対応態様について、定性的及び定量的データを収集し、災害高リスク地域における災害復興課題を住民の視座から明らかにしようとする研究である。2年目となる今年度は、9月にノアカリ県ハティア島においてフィールド調査を実施し、被災地域における定性データ収集をおこなった。ハティア島は、バングラデシュ全土で14万人が亡くなった1991年のサイクロンで壊滅的被害を受けた。ハティア島の中でも特にサイクロン被害が深刻なレハニア村は、1991年以降もサイクロンによる人的・物的被害が定期的に発生していることから、貧困層が抱える長期的な生活再建課題を研究できる社会的環境にあると言える。 同村における調査から、91年のサイクロン被災直後には、外部から十分な物資の支援が実施されていた実態が明らかとなった。一方で、仕事道具や家屋など中長期的な復興にむけた支援はなされておらず、特に家屋の復旧のために被災者がNGOの実施するマイクロクレジットや親戚から借り入れをおこなっている事実が明らかになった。借入金の返済は長期にわたっており、被災住民の復興を困難なものとしていることが予想される。 ここまでの調査結果(昨年度実施したものを含む)をもとに、大妻女子大学人間生活文化研究所の人間生活文化研究に論文(査読あり)として投稿をおこなった。また、被災住民の避難行動態様に関する英文論文をバングラデシュのJahangirnagar Universityの社会学論集に投稿し、査読を経て採択された(6月出版予定)。 さらに、一般向けの図書として『歴史としてのレジリエンス』(京都大学学術出版会)において、第6章「脆弱な土地に生きる-バングラデシュのサイクロン防災と命のボーダー-」の執筆をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調書上に述べた研究活動の全般についてはほぼ予定通りの展開がなされているが、現地調査については、バングラデシュにおける治安情勢の悪化から、必ずしも予定通りに実施できていない。特に、10月に発生した日本人殺害事件を踏まえ、現地調査の協力を依頼しているダッカ大学人類学部の教員および調査メンバーから、調査の延期を助言されたことから、調査予定地一カ所における現地調査を、来年度の補足調査に組み入れることとした。 一方で、成果発表については予定以上に進展しており、全体としては本来の目的に沿った研究活動を活発に展開できていると思量する。最終年度を前にして、被災地域における研究データのとりまとめに向けた充分な準備を整えることができたことから、平成28年度にはさらなる研究成果を積極的に公開し、また本研究をさらに発展的に展開するための方向性と具体的な方策について議論を深めることが肝要であると考量する。
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今後の研究の推進方策 |
バングラデシュにおける治安情勢の悪化から、本年度は一部被災地域における現地調査を延期せざるをえなかった。現地調査の協力を依頼しているダッカ大学人類学部の教員および調査メンバーとの協議のもと、安全管理に万全を期した上で、来年度補足調査を行うことを予定している。 一方で、成果発表については予定以上の進捗が見られたことから、来年度も積極的に研究成果を公開し、本研究をさらに発展的に展開するための議論を深めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
バングラデシュにおける治安情勢の悪化から、一部被災地域における現地調査を延期せざるをえなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
現地調査の協力を依頼しているダッカ大学人類学部の教員および調査メンバーとの協議のもと、安全管理に万全を期した上で、来年度補足調査に使用することを予定している。
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