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2016 年度 実績報告書

バングラデシュ南部沿岸地域におけるサイクロン被災後の復興課題に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 26760010
研究機関東京外国語大学

研究代表者

日下部 尚徳  東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (60636976)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード地域研究
研究実績の概要

本研究を通じて、バングラデシュ南部沿岸地域におけるサイクロン災害高リスク地域で継続的に現地調査を行ってきた。そして、同国南部島嶼部においては、防潮堤の外側に土砂の堆積作用によって形成される「堤外地」に住む人びとに人的・物的被害が集中する社会構造を明らかにした。また、①生活基盤の弱い貧困層が災害リスクの高い堤外地に移り住むことによって高まる地域の災害脆弱性、②家財や家畜への強い執着など、貧困に起因する要因から避難行動がとれないことによる低い災害対応力、③貧困層に被害が集中することによる低い災害復旧力、の相互作用によって地域の脆弱性が高まり、被害が拡大することを指摘した。
堤外地においては、事前の避難行動によって一命を取り留めたとしても、高潮によって家財一式を失う、世帯主が高潮に流され働き手を失う、といった人的・物的被害が発生し、生活再建の大きな障害となる。サイクロン被害による生活水準の低下は地域の災害脆弱性を高め、次の災害への対応力を低下させることから、高リスク地帯の住民の迅速な生活再建が防災上の課題となる。また、被災者の生活再建課題は宗教・文化・民族などの住民属性や、働き手や高齢者の有無といった世帯属性によって異なる。そのため、本研究では、これら属性を変数として、堤外地の貧困層が被災後に抱える生活再建課題と、課題への対応態様を描写することに努めた。
これまで、災害復興に関する研究は開発援助論に立脚したものが中心であった。同国の地域性・歴史性を重視し、地域研究の視点から災害研究の再検討を試みた本研究は、「地域立脚型」の災害復興政策をうち立てるうえで貴重な先行研究として位置づけられる。また、高リスク地帯の貧困層が被災後に十分な生活再建ができないことが原因で、災害に対する脆弱性が長期的に高まるプロセスを描写したことにより、実践への示唆を得ることができたと思量する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Evacuation Behaviour in a Cyclone High Risk Area:A Case Study of Hatiya Island, Bangladesh2016

    • 著者名/発表者名
      KUSAKABE, Naonori
    • 雑誌名

      The Journal of Social Studies』Center for Social Studies

      巻: 21 ページ: 37-60

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 脆弱性の再検討-フィールド研究の視座から-2016

    • 著者名/発表者名
      日下部尚徳
    • 雑誌名

      ボランティア学研究

      巻: 16 ページ: 3-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] サイクロン常襲地域における被災後の復興課題に関する研究-バングラデシュにおける定性調査をもとにした事例研究-2016

    • 著者名/発表者名
      日下部尚徳
    • 雑誌名

      人間生活文化研究

      巻: 26 ページ: 583-594

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 穏健な国で巻き起こるテロ-バングラデシュ・ダッカ、人質事件-2016

    • 著者名/発表者名
      日下部尚徳
    • 雑誌名

      世界9月号

      巻: 886 ページ: 20-24

  • [学会発表] サイクロン常襲地域における被災後の復興課題に関する研究-バングラデシュにおける定性調査をもとにした一考察-2016

    • 著者名/発表者名
      日下部尚徳
    • 学会等名
      バングラデシュにおける災害支援と地域開発の最前線
    • 発表場所
      東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(東京都府中市)
    • 年月日
      2016-12-11
  • [学会発表] 7.1テロ事件、その後の展開2016

    • 著者名/発表者名
      日下部尚徳
    • 学会等名
      ダッカのテロ事件とバングラデシュの若者たち-その背景とこれからを考える
    • 発表場所
      東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(東京都府中市)
    • 年月日
      2016-10-09
  • [学会発表] ダッカ・テロ事件-バングラデシュにおけるイスラームと政治-2016

    • 著者名/発表者名
      日下部尚徳
    • 学会等名
      バングラデシュ・ダッカにおける襲撃事件を受けて
    • 発表場所
      笹川平和財団ビル国際会議場(東京都港区)
    • 年月日
      2016-07-14
    • 招待講演
  • [図書] 歴史としてのレジリエンス2016

    • 著者名/発表者名
      川喜田敦子・西芳実編、長沢栄治、日下部尚徳他
    • 総ページ数
      380(221-258)
    • 出版者
      京都大学学術出版会
  • [図書] アジア動向年報20162016

    • 著者名/発表者名
      中川雅彦、鈴木有理佳、荒井悦代、日下部尚徳他
    • 総ページ数
      662(467-490)
    • 出版者
      アジア経済研究所

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公開日: 2018-01-16  

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