本研究は、バングラデシュのサイクロン常襲地域において、住民が被災後に抱える生活再建課題を明らかにしようとする試みである。災害リスクの高い地域においては、避難行動によって一命を取り留めたとしても、高潮によって家財を失う、世帯主が高潮に流され働き手を失う、といった人的・物的被害が発生し、生活再建の大きな障害となる。サイクロン被害による生活水準の低下は地域の災害脆弱性を高め、次の災害への対応力を低下させることから、迅速な生活再建が防災上の課題となる。本研究は、途上国に対して積極的な防災支援を行っている日本にとっても多分に示唆的な内容を含んでおり、援助現場に対する裨益効果を期待するものでもある。
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