研究課題/領域番号 |
26760012
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
加藤 太 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (90512244)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | タンザニア / 稲作 / 地域研究 |
研究実績の概要 |
本研究では良好な民族関係の構築に貢献するため、研究成果を地域社会に還元すると同時に、民族集団の共生関係に影響を及ぼす要因について分析することを目的としている。平成26年度は、1.両民族集団の間で共通の問題となっている稲作技術の集約化に関する研究、2.民族関係に影響を及ぼす土地の利用状況の分析、3.民族集団間における資源や技術の共有についての調査を実施した。 1.稲作技術の集約化についての研究:平成26年度は、調査地における稲作の実態把握として、イネの栽培方法やコメの加工法に注目した。栽培方法については、半農半牧民は移植を、農耕民は直播を採用していることが判明した。しかし、栽培品種は同一種であり加工方法についても大きな差が見られなかった。また、両民族とも炊くと粘るコメを好む傾向にあるため、収穫したコメを介した相互扶助的な協力関係が見られた。こうした特徴は、タンザニアにおける他の稲作地域でも確認することができた。土壌鎮圧機に関しては開発試験を開始した。 2.民族関係に影響を及ぼす土地の利用状況の分析:民族集団間の関係に及ぼす土地利用については航空写真を利用して地図を作成した。この結果、両者の生業で利用している土地の位置が判明した。さらに土地問題は両民族集団だけでなく地域外の人間による土地の囲い込みも大きく影響していることが判明した。 3.民族集団間における資源や技術の共有:両民族集団の関係の一つとして、牛耕を介した協調関係について調査した。農耕民と半農半牧民は、牛耕を介した協力関係を維持していることが明らかになった。さらに、経済的な結びつきとして半農半牧民が経営している商店についても現地調査を実施した。この結果、農耕民が半農半牧民の商店を盛んに利用しており、経済的な共生関係も成立していることが分かった。この調査結果は平成27年度以降に発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の進捗状況であるが、おおむね順調に調査・研究を実施することができた。稲作の集約化については、現地で営まれる在来稲作の実態把握が完了した。ただし当初予定していた鎮圧機の開発と発芽率についての試験が平成26年度中に完了しなかったため、平成27年度以降の研究計画の推進の妨げにならない範囲で継続して実施する予定である。民族関係に及ぼす土地の利用状況の分析については、調査地における土地利用の状況の把握が完了した。民族集団間における資源や技術の共有については、畜力だけなく商品を介した地域経済の中にも両者の強い関係が存在していることが明らかになった。こうした事例は民族問題の解消を考える場合、対立の解消プロセスに関連する大きな要因の一つと捉えることができるが、詳細な分析が必要なため公表は平成27年度以降に実施することにした。 また地域への研究成果の還元を目指した住民セミナーも実施した。平成26年度のセミナーでは研究計画の実施概要を説明するとともに、平成27年度以降も継続してセミナーを実施することで研究成果を地域還元していく旨を伝えた。 しかし成果の公表については、データの分析に時間がかかり、一部のテーマしか平成26年度中に発表できなかった。平成27年度以降の結果は、1年目に得られた調査結果も含める形で公表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降も、研究計画に沿った形で調査研究を実施する予定である。ただし、平成26年度の段階で本研究テーマに関連した住民の要望を聞いたところ、住民グループが耕作している野菜栽培用の農地において土壌浸食の問題があることを指摘された。野菜栽培については平成27年度の研究テーマになっているため、栽培方法の模索の一環として土壌保全の方法も検討する予定である。具体的には野菜の栽培を予定している圃場の斜面上部にタケを移植する等の工夫を検討したい。 また、平成26年度のテーマであった稲作の集約化についても、住民セミナーにおいて脱穀機の需要がある旨の情報を伝えられた。調査地では収穫から脱穀までの作業が長く続くことが問題になっている。稲作は農耕民だけでなく半農半牧民においても重要な生業となっているため、鎮圧機の開発の傍ら脱穀機の開発も並行して進めることになった。 こうした実践的な試験研究は、当初の計画よりも若干テーマを加えた形で継続し、住民の要望に沿った形で地域還元していくことを予定している。また、良好な民族関係が構築されていく過程については、当初の計画通りにモニタリングを継続することで、民族問題の解消プロセスに必要な要因の抽出を行う予定である。
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