タンザニア連合共和国では農耕民と牧畜民あるいは農牧民との間で土地をめぐる民族間の対立が問題となっている。同国中南部に位置するキロンベロ谷でも農牧民スクマと農耕民ポゴロの間で土地争いが頻発するようになったが、近年は協調関係もみられるようになってきた。 この背景には両者の間に牛耕を媒介とした関係が構築された点や、中立な意見を言う両者の「老人」が対立する両者の仲裁に当たったことがあげられる。また、スクマは先住している農耕民との距離を巧みに保ちながらも、何らかの要因でこの距離が保てなくなったときには、彼らがもつ多彩な技術やホスピタリティを駆使しながら共生的な関係を築いていったことが明らかになった。
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