研究課題/領域番号 |
26760013
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
竹峰 誠一郎 明星大学, 人文学部, 准教授 (40523725)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マーシャル諸島 / 核実験 / 核被害 / 補償 / 被曝 / 軍縮 / 記憶の継承 |
研究実績の概要 |
米国の核実験が67回実施されてきた中部太平洋のマーシャル諸島をフィールドに、核実験被害〈補償〉をめぐる包括的研究に取り組んでいる。広島・長崎の原爆被害者の〈補償〉問題を論じた伊東壮が打ち出した「三つのほしょう」論を踏まえ、狭義の補償だけでなく、被害者の現在の生活に対する「保障」、繰り返さない未来の証を築く「保証」も含めた〈補償〉論の見地から調査を重ねている。 同研究の2年目にあたる2015年度は、マーシャル諸島共和国で現地調査を実施するとともに、米国立公文書館での調査を実施し、〈補償〉をめぐる経過と現状を概ね把握した。同時に、繰り返さない未来の証を築く「保証」として、マーシャル諸島共和国政府が、2014年、核軍縮義務の履行を求め国際司法裁判所に核保有9か国を訴えた、「核ゼロ訴訟」に着目して調査を進めた。また、核実験の継承に関わる現地の取り組みとして、新たなNGOの動きなどについても理解を深めることができた。 比較の視点を得るために、福島での現地調査を行ったり、旧ソ連の核実験場であるセミパラチンスクの核実験補償制度について理解を深めたりもした。 研究成果は『アメリカ史研究』で論文を発表したり、日本平和学会で報告をしたりした。また雑誌『世界』や『現代思想』に寄稿をしたり、「世界核被害者フォーラム」や「反核法律家協会」の総会で報告をしたり、社会に開かれた研究活動を展開した。 あわせて国際的な研究成果の発信にも取り組んだ。例えば、英語での論文の執筆を行い採択され、Regional Ecological Challenges for Peace in Africa, the Middle East, Latin America and Asia Pacific (2016, Springer) に近く所収される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)現地調査を予定通り実施し、補償の概要をより詳細につかむとともに、被曝地の未来をどう拓くのか、核ゼロ訴訟や、新たなNGOの動きなども押さえることができた。 2)『アメリカ史研究』『世界』『現代思想』をはじめ研究成果を積極的に発表することができた。 3)国際的にも研究成果を発表したり、福島や旧ソ連の核被害と補償をめぐる状況の理解を深めたり、今後の研究をより普遍的に展開していく土台がある一定築けた。
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今後の研究の推進方策 |
1) マーシャル諸島の核実験補償をめぐる概要をまとめて、論文などの形で発表していく。 2) 旧ソ連のチェルノブイリ原発の被害とその補償をめぐる状況について理解を深め、比較の視点をより磨いていく。 3) 『原発事故の被害と補償』(大月書店、2012年)の著者である大阪市立大学の除本理史氏らをはじめ環境研究分野の方々との研究交流を進める。 4) 研究成果の国際的な発信に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年4月に、ベラルーシに招聘を受けて国際会議で報告をすることになった。滞在費は先方もちであるが、渡航費はこちらで負担することになったため、繰り越しを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年4月に、ベラルーシに海外出張をし、その渡航費に充当する。
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