研究課題/領域番号 |
26760013
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
竹峰 誠一郎 明星大学, 人文学部, 准教授 (40523725)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マーシャル諸島 / 核実験 / 核被害 / 補償 / 被曝 / チェルノブイリ / 太平洋と核 / グローバルヒバクシャ |
研究実績の概要 |
米国の核実験が67回実施されてきた中部太平洋のマーシャル諸島をフィールドに、核実験被害〈補償〉をめぐる包括的研究に取り組んでいる。同研究の3年目にあたる2016年度は国内の学会はもちろんのこと、国際的な場や、市民社会に対しても研究成果の報告を積極的に行った。主な成果は次の5点である。 1) マーシャル諸島の核実験補償制度の概要をまとめ、『環境と公害』(2016年10月号、岩波書店)で論文を発表するともに、「環境政策環境経済・政策学会2016年大会「原子力の事後処理・被害補償をめぐる制度と費用負担」で学会報告を行った。 2)マーシャル諸島政府が主催したMarshall Islands Nuclear Legacy Conferenceに招聘され、核実験補償の未認定地域に焦点をあて、補償範囲の線引きの在り方を問い直す報告を行った。 3) 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故をテーマに研究をしている現地の研究者との研究交流を進め比較の視点を得た。ベラルーシで開催されたInternational conference Chernobyl accident and society: 30 years after catastropheに参加し、研究報告を行った。またウクライナでUkraine-Japan Seminar on Lessens from Various Nuclear Disasters in the Worldに参加し、研究報告を行った。 4) 明治学院大学国際平和研究所(PRIME)シンポジウム「太平洋核実験 70 年―1946 年『クロスローズ作戦』再考」では、一般市民の方も多く集まるなか、基調講演を行った。 5) 日本平和学会3.11プロジェクト委員として、環境社会学会や日本環境会議の関係者とも相互連携を拡げながら、共同研究を展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)現地調査を予定通り実施し、被曝地の未来をどう拓いてきたのか、拓こうとしているのか、a.マーシャル諸島の新政権の動き、b.核実験場、避難地域、補償の非認定地域の動き、c.NGOの動きを押さえて、包括的に捉えることができた。 2)マーシャル諸島現地で研究成果を報告する機会を得て、フィールドワークの成果を現地の社会に還元する機会が得られた。今後もフィールドワークを進めていくうえで、マーシャル諸島の人びととの間で信頼感をより得ることができた。 3)マーシャル諸島で現地調査をすすめるなかで、米国内でマーシャル諸島の核実験をテーマに研究を進める研究者らと出会い、研究交流を進めることができた。 4)日本環境会議の学会誌や、環境経済・政策学会、法政大学サステイナビリティ研究所で研究報告を行い、環境研究分野の研究者との新たな連携を築くことができた。福島原発事故の補償や再生の議論に学び、比較する視点を得ることができた。 5)ウクライナとベラルーシでチェルノブイリ原発事故をテーマに研究をしている研究者、表現活動をしている文化人、被災者、元事故処理作業員、NGO活動をしている方々らと、現地で知り合うことができた。それらを通じて、チェルノブイリ原発事故をめぐる経過と現状を学び、比較の視点を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)マーシャル諸島で現地調査を行う。米国から新たな補償金を獲得することが難しくなっているなかで、被曝地の未来をどう拓こうとしているのか、マーシャル諸島政府の動向、地域社会の動向、さらにNGOの動向について、さらなる調査を進めていく。 2)米核実験の補償交渉をめぐる米公文書の読解作業を通じて、米国側の政策的意図を読み解いていく。 3)研究成果をまとめ、その一端をISA International Conference 2017, Hong Kongや環境社会学会で報告する。 4)研究成果を発信していくために、日本語での論文の執筆は勿論であるが、英語での学術書の出版に向けた作業に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際的な発信能力を備えた研究に仕上げていくためである。とりわけ以下の3点が理由である。1)次年度に香港で開催される国際学会で報告する機会を得たため、2)昨年度にベラルーシで出張した際に、ネットワークを構築し、その関連で次年度に追加調査を行う必要性がでてきたため、3)マーシャル諸島の現地調査を次年度も実施する必要性がでてきたため。
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次年度使用額の使用計画 |
1)ISA International Conference 2017, Hong Kongに出席をして報告を行う、2)ベラルーシでの現地調査を実施する、3)マーシャル諸島での現地調査を実施する これらを通じて、国際的な発信能力を備えた研究に仕上げていく。
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