1.現地調査:当初予定より調査期間を短縮の上、2回の補充調査①イスラーム法における非嫡出子に関する宗教指導者への聞き取り、②移住家事労働者のこどもに対する非指示的面接調査をおこなった。以下、得られた知見を記す。①主たる調査地としている西ジャワ州チアンジュール県と、ジャカルタの宗教指導者では、非嫡出子に関する解釈が異なっていた。②非嫡出子に対するスティグマは、移住家事労働者に対するスティグマと連続していると考えられる。つまり、「かわいそうな」家事労働者、「家事労働者の夫」、そして「移住労働者の非嫡出子」という、移住家事労働世帯へのスティグマ付与と捉えることが可能だろう。しかしながら、本調査で明らかにしたように、父の欄に親戚や兄弟から名前を借りたり、またそれが困難な場合には、養子に出したりするなど、両親のある子として出生登録することで、移住女性は父のいない子供たちを社会的に不可視化することが可能となり、道徳的または宗教言説であらわされる罪の状態から子供たちを解放することが出来る。この問題は、経済的に困窮し、宗教的、道徳的に困難に陥った、「かわいそうな」移住家事労働者たちの問題として単純に理解されているが、存在しているにもかかわらず、社会的に不可視化される子供たちには、植民地時代の「混血児」でもなく、通常用いられる「罪の子」や「アラブの子」でもなく、実態把握に基づいた社会的関心が必要である。 2.成果報告:本調査研究で得られた知見につき、国内学会(国際ジェンダー学会)および国際学会(The 3rd International Indonesia Forum for Asian Studies)にて報告した。 3.ネットワーキング:インドネシア人移住家事労働者に関して調査研究をおこなっている国内研究者と、移動、新自由主義に関する4回の文献講読会、研究会を開催した。
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