研究課題/領域番号 |
26760019
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
丸山 里美 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20584098)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 貧困 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究の目的の一つ目は、女性の貧困をセクシュアリティに注意しながら把握するということである。そのために、貧困者の支援をしている団体「NPO法人自立生活支援センター・もやい」の相談記録を、過去に分析したもの(平成16年~平成23年7月)にくわえて、新たに平成23年8月~平成27年3月まで、981ケースのデータ入力を完了した。これでデータ総数は3286ケースとなった。さらに、データクリーニングを行い分析できる状態にし、共同研究者を集めて分析の分担を決めた。 研究目的の二つ目は、女性福祉に見られる性規範をミクロに把握するということである。本年度は大阪府内にある貧困女性を対象とした福祉施設(母子生活支援施設、婦人保護施設、救護施設、DVシェルター等)や相談機関の職員に、利用者と支援の実態について聞き取り調査を進めた。それに基づいて、異なる法制度にまたがって存在している貧困女性の支援制度の異同を整理した。その成果は、貧困女性の支援に大きな役割を果たしてきた売春防止法改正の検討を進める議論に参加するなかで、活用することができた。 研究目的の三つ目は、女性の貧困を把握する際の理論的研究を進めるということである。本年度は、女性の貧困が見えにくい大きな要因になってる家庭内の資源配分について、海外の論文を読み進め、研究状況を把握した。また当該分野のイギリスの研究者と意見交換を行い、国際比較共同研究の可能性についても議論し、今後の研究を進めていくための示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の一点目に関しては、データ入力・クリーニングが完了し、研究協力者との分担も決まり、分析ができる状態が整ったため、計画通りに進展していると認識している。 二点目については、売春防止法改正の議論や、厚生労働省が行う婦人相談所調査の検討メンバーになったことで、これまでの研究成果を現実に反映させることができたとともに、現在の政策検討の状況について情報収集を進められたため、予想以上の進展だと考えている。 三点目については、イギリスの研究者との交流により、今後の国際比較研究への道筋が開かれ、順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的の一点目に関しては、今年度はデータの分析を行い、報告書を作成する。また、女性の貧困の実態については、本データから読み取れることをまとめた論文を執筆する予定である。 二点目については、大阪府内における貧困女性の支援制度を整理した資料を作成し、それを広く福祉事業従事者に知ってもらい、支援実践に活用してもらうためのシンポジウムを開催する予定である。 三点目については、世帯内部の資源配分に着目した英語圏の文献、および日本の過去の調査研究を読み進め、到達点をまとめた論文を執筆する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、「もやい」のデータ入力に当初の予想よりも時間がかかったため、次年度の研究費の前倒し請求をし、データ入力・クリーニングを完了させた。前倒し請求の際には、本年度の入力に必要な金額を正確に把握できなかったため、若干多めに請求をしており、謝金に余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、さらに必要なデータクリーニングと、データの分析、報告の作成を、研究費の残金の範囲で行う予定である。
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