本研究は2014年に設定された占冠村猟区を事例とし、猟区導入過程における猟区と観光狩猟が地域社会にもたらす社会的な影響を分析することで、観光狩猟と地域資源管理がもつ可能性を明らかにすることを目的とした。その結果、住民からは安全な狩猟の実施を期待する声が多く聞かれた一方で、経済的・生態学的メリットに対する期待はほとんど聞かれなかった。むしろ、農業被害対策の軽視と、過去の観光開発のようにトップダウン的な政策への不安が聞かれた。そのため、猟区によるエゾシカの利用管理において、「安全な狩猟」「農業被害対策」「地域経済の活性化」と「住民の生活実践」とのすり合わせが重要であると考察された。
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