本研究は現代社会において聖地が開発現象の文脈で再編成されるプロセスと派生的諸問題について、民族誌的なアプローチによって考察したものである。世界遺産にも登録された沖縄県南部の聖地を中心としたフィールドワークを通じ、宗教的な空間が観光地となり、訪問者が質量ともに増加する状況を背景に、以下の3点を明らかにした。(1)観光客増加に伴い聖域の保護が喫緊の課題となり、それに対応する形で宗教/観光を一元管理する仕組みが体系化されたこと、(2)管理体系化は文化遺産を社会に開放していく公共性の理念と必ずしも両立しないこと、(3)聖地の公共的管理においては既存の宗教伝統と融和的な関係を持つ必要性があることである。
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