研究課題/領域番号 |
26760025
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
薬師寺 浩之 立命館大学, 文学部, 職員 (70647396)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海外ボランティアツアー / ボランティアツーリズム / 孤児院 / カンボジア / 観光倫理 |
研究実績の概要 |
本研究は、カンボジアにおける孤児院ボランティアツアーを事例として、日本人が参加する海外ボランティアツアーの文化はどのようなものであるのか、それはどのように生成されているのか、さらにそれに関わる倫理的諸問題とはどのようなものであるのかについて、フィールドワークをもとに探究することを目的としている。 開発途上国での孤児院ボランティアツアーは、恵まれない孤児に対して貢献ができる上、一般的な観光旅行では不可能な国の本当の姿を知ることができる真面目で「倫理的な」ツアーであることを謳い文句に、視野の拡大を通して自己の成長を期待する先進国の大学学部生を中心とした若年層に人気がある。一方で、一部の国際人権擁護団体や研究者は、それは孤児の商品化や新植民地主義を助長する先進国のエゴイズムによって成り立っている「非倫理的な」ツアーであると主張している。このように、孤児院ボランティアツアーは倫理的なジレンマを孕んでいるものの、今までその現状や倫理的諸問題に関する学術的な考察は行われてこなかった。 初年度である2013年度は、以下の研究が行われた: 1.東南アジア諸国での孤児院ボランティアツアーの体験記を分析し、日本人ツアー参加者の経験と開発途上国に対する印象に関する言説分析を行った。研究結果は、江口信清編『観光の地理学』(文理閣,2015年)に所収されている。(薬師寺浩之「海外孤児院ボランティアツアー参加者の経験と開発途上国に対する印象に関する考察」) 2.カンボジア・シェムリアップ市にある日本人が参加するボランティアツアーを受け入れている孤児院を訪問し、参与観察並びに、孤児院の管理者とツアー参加者へのインタビュー調査を実施した。このフィールドワークは来年度以降の本調査のための予備調査として位置づけ、カンボジア・シェムリアップ市における孤児院ボランティアツアーの全体像の把握や、調査環境の把握などに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書の通り、おおむね初年度の目標であった日本人が参加する海外孤児院ボランティアツアーの全体像を把握することができたと考える。 ただし、ツアーを企画・催行する日本国内のツアーオペレーターへの聞き取り調査は、当初初年度の実施予定であったが行うことができなかった。2015年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は2014年度に行った予備調査の結果を発表(論文発表および口頭発表)するとともに、カンボジアの孤児院でのフィールドワークを本格的に行い、日本人が参加する海外孤児院ボランティアツアーの文化、またそれに関わる倫理的諸問題に関する考察を深化させていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
観光学に関する洋書数冊を購入予定であったが、品切れのため2014年度内に購入することが出来なかったことが次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度はカンボジアでのフィールドワーク、および日本国内のボランティアツアー催行業者への聞き取り調査(於:東京)に関わる旅費が全支出の3分の2程度を占める予定である(直接経費800,000円中500,000円程度)。残り300,000円のうちの約半分は書籍購入に充てられ、そこに2014年度に未使用であった46,076円を上乗せして昨年度に購入予定であったが購入できなかった洋書数冊を購入する。
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