本研究は、今後増加が見込まれる地方観光地のインバウンド観光を対象として、経済的な観点から外国人観光消費が地域にもたらす経済効果を定量的に検証することを目的とする。 地域における経済効果計測手法と外国人観光消費データの取得方法を平成26年度に検討し、平成27年度は地域での外国人観光消費データをもとに、国籍等旅行者属性による観光消費特性を考察した。 今年度は遅れていた外国人観光消費調査の追加調査を実施し、地域の観光消費単価推計に必要なサンプルサイズを拡充した上で、平成26年度に検討した経済効果計測手法を用いて富士河口湖町と高山市をケーススタディに外国人観光消費が地域にもたらす経済効果の実証分析をおこなった。 分析の結果、富士河口湖町にとどまる経済波及効果は年間29.1億円と推計された。また、富士五湖地域での外国人観光消費が山梨県にもたらす波及効果は年間41.1億円と推計され、これは既存の産業連関分析により算出される38.8億円と比較しても大きな差はなく、推計値は妥当と考えられる。本研究で取得した観光地域経済調査には高山のデータは含まれておらず、代わりに高山では独自の事業所調査を実施しているため、この値を基に参考として経済波及効果を算出したところ、年間55.8億円と推計された。以上より、本研究で提案したインバウンド観光経済効果計測手法を用いることで、外国人消費データを取得するだけで簡便に経済波及効果を推計できることが示された。
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