研究課題/領域番号 |
26770001
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
朝倉 友海 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30572226)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 京都学派 / 新儒家 / 形而上学 / 存在論 / 意味論 |
研究実績の概要 |
本研究「東アジア哲学の統合理論へ向けて:現代新儒家と京都学派を中心に」は、東アジアにおける異なった二つの現代哲学としての京都学派哲学と新儒家の哲学を、総合的に把握する理論的基盤の構築を目指しているが、その「たたき台」として初年度に提示したのは、西田の場所の理論と牟宗三による円教の理論とに共通するところの無を基底とした存在論、「存在-神-論」との対比における「存在-場所-論的構成」であった。二年目にあたる平成27年度は、この「たたき台」から一歩進めて、西田幾多郎と牟宗三における人格性の理論にみられる相同性の解明を進めた。これにより、懸案だった京都学派と新儒家における歴史哲学の統合への視野が開かれることになった。 同時に、従来の京都学派研究および新儒家研究では注目されてこなかった三つの論点が新たに浮き彫りになってきた。それは次のとおりである。 第一に、牟宗三の円教論が、従来のようにカントおよびドイツ観念論との関係においてではなく、論理をめぐる初期の考察との関連により生み出されたということ。初期の分析哲学とりわけラッセル・初期ウィトゲンシュタインとの対峙を背景として、牟宗三の仏教理解が育まれたということは、「意味」をめぐる理論的考察としての円教論という新たな理解の可能性を示唆する。 第二に、西田哲学においてもまた、従来の研究におけるような華厳教学との関係においてだけではなく、天台宗における法華円教の思想との関わりのなかで把握するということが、意味論との連関を示唆するということ。 第三に、東アジア哲学の共通の基盤を、意味の理論との関係で位置づけようとするならば、二〇世紀の西洋哲学における相似の議論(例えばドゥルーズによる現象学批判)についてだけでなく、京都学派においては特に山内得立による後年の議論をめぐって再検討が必要となってくること。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年目の平成27年度は、初年度における研究交流から生み出された結果として、主に京都学派の研究者を中心とした中国での国際会議、および香港で開催された、大規模な国際学会であるInternational Society for Chinese Philosophyにおける発表を行うことができた。後者では、アメリカ・台湾・香港の研究者とともにパネルを組み発表および討議を行った。 以上のような活動を通じて、平成28年度における国際会議の計画も、国内外の研究者の協力によって、新たなかたちで具体化を進めている。ただし、理論的進展にともない、これまでの計画では想定していなかった多数の文献をあらたに調査しなければならないことが次第に明らかになってきた。この点は、平成28年度の新たな課題となってきている。
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今後の研究の推進方策 |
理論的進展にともない、これまでの計画では想定していなかった多数の文献をあらたに調査しなければならないことが次第に明らかになってきた。具体的には、牟宗三の円教論の背景としての初期の分析哲学との対峙をめぐって、理論的な精査を進めることが、新たな課題として出てきている。これは同時に、初期から中期にかけての西田哲学の背景、さらには山内得立による後年の西田批判とも深く関係しているため、避けて通ることはできない。この新たな課題を、平成28年度中にできるかぎり行うことで、東アジア哲学の統合理論へ向けての前進を図る必要がある。
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