研究課題/領域番号 |
26770003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松浦 和也 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (30633466)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アリストテレス / ソクラテス以前 / 哲学 / 科学史 / 思想史 |
研究実績の概要 |
2016年度は当初の計画通り、1) アリストテレス自然学的著作に現れるイオニア哲学者に対する言及を集積し、先行文献を批判検討しながら、その議論構造を論理的に再構成する基礎作業をつづけた。2)一方で、研究遂行中において、彼のテクニカルタームの扱いに関わる次の問いが生まれた。すなわち、彼のタームは、一義的であれ(『形而上学』第5巻などで表明されるように)多義的であれ、『全集』中の明晰な用例を元にしてパラフレーズできる、と期待することによってわれわれは彼の議論をしばしば再構成するが、そのような期待は無条件に妥当と認めてよいかという解釈の方法論に纏わる問題である。この問いに対し、中心的タームのひとつである「自然(ピュシス)」概念とジェンダー論的論争を題材に検討した。(下記発表2、論文1)。この検討から示唆されたことは、先の期待は無条件的ではなく、文献学的あるいは歴史的正当化を必要とする、ということである。3)また、 当初計画していた、ソクラテス以前の自然哲学者の文献について、近年刊行されたTraditio Presocraticaシリーズの第1巻に関する書評を執筆した。(下記論文2)。この執筆の過程において、現代に残るタレスに関する報告は古典期までで出そろっていることを確認した。4) さらに検討課題の一つであった学術的情報の流通過程に関しても『ニコマコス倫理学』『政治学』で表明されるアリストテレス自身の貨幣論からいくばくかの示唆をえることができた。(下記発表2)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度の研究遂行は遅延が見られたが、2015年度は予定していた文献学的読解を進行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画の記載通り、本研究課題をとりまとめ、論文の形で公表することを第一の目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年10月上旬に研究代表者の所属機関が変更(東京大学から秀明大学)となることが内定していた。それに伴い、新所属機関において研究環境を整えるための物品費が新たに必要になると想定された。
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次年度使用額の使用計画 |
新所属機関において研究体制を確立するため、旧所属機関に研究開始前から蔵書していた重要基礎文献の購入と、文房具をはじめとした各消耗品、コンピューター関連機器の購入に充てる予定である。
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