本研究は、道徳直観についての心理学的知見が、道徳直観の信頼不可能性を結論づけるようなインパクトを持っているのかを見定めることを目的とする。この研究を通じて、道徳直観の操作によって影響を受ける判断生産プロセスは行為表象を入力とした処理を行っているという説明を提案すると同時に、道徳認識論において想定されてきた直観の種類を分類し、それが心理学的研究における直観とどのように対応するのかを明らかにした。さらに、道徳的責任についての判断の入力となる自由意志の表象が、行為者性と他行為可能性の表象によって構成されていることを明らかにし、新たな実験研究のための理論的基礎づくりと尺度開発を行った。
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