研究課題/領域番号 |
26770008
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
小川 彩子 学習院大学, 文学部, 助教 (10726582)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 哲学 / 音楽 |
研究実績の概要 |
今年度は、下調査の目的もあり、まず参考となる従来の先行研究を集め、それらをデータベース化することから始めた。またそうした先行研究においてmusica概念がいかに取り扱われてきたのか、研究の変遷を調査した。先行研究ではアウグスティヌスの著作からmusica概念のみを抽出する形での研究は数少なく、例えば、De Musica執筆時期の具体的な宗教音楽がいかなるものであったのか、もしくはnumeriとの関連を見るものなどはあるものの、当時のmusicaという語にどのような語義が含まれているのかという問題に対して正面から扱う研究は少ない。他方、こうした先行研究を踏まえたうえで、アウグスティヌスのテクスト読解も進めた。主に『音楽論』と『秩序論』に著作を絞り、その中でmusica概念がアウグスティヌスによって、いかに理解されているかの解釈に努めた。『音楽論』という著作自体、その後に加筆修正を加えられたという経緯を持ち、また、後年のアウグスティヌス自身満足に執筆していないことを仄めかしている作品でもあるため、アウグスティヌス自身にとっての「音楽」の位置づけ自体も、非常に難解なものであると考えられる。研究の成果物としては、上野学園大学110周年記念論文集にて論文を発表(「哲学としての音楽―アウグスティヌスにおける音楽(musica)の意味―Music as Philosophy : The Meaning of Musica in Augustine’s Writings.」、上野学園大学、2015年。)。時代推移を念頭に入れたうえで、『音楽論』と『秩序論』を比較検討することによって、アウグスティヌスがいかにmusica概念を捉えていたのかを一先ず明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の先行研究収集ならびにデータベースの作成、アウグスティヌスのテクスト読解、また、研究論文の形式で研究成果の公表と、当初の計画通り、平成26年度の研究がすすめられたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、アウグスティヌスの時代より遡り研究の射程を広げたいと考えている。平成26年度に行った、アウグスティヌスのテクスト読解を踏まえて、musica概念がどのような経緯でアウグスティヌスの理解へと収斂するに至ったのか、musica概念の歴史的変遷の一端を掴めればと考えている。そのために、アウグスティヌスから遡る新プラトン主義者やキリスト教神学者などの著作におけるmusicaの語義を検討する。例えば、アンブロシウスやプロティノス、オリゲネスなど、またクインティリアヌスやキケロなど弁論術と関連して述べている箇所はないか、または、オウィディウスらの著作において日常的な意味でのmusicaという語の使用を見ることはできないのか、等を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度において、研究資料となる図書購入のすべてを終えることができなかったため、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度において、昨年度購入することができなかった資料の収集に努め、平成26年度購入予定の資料より順次購入を進めていく。
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