研究実績の概要 |
前年度までの研究成果に基づいて、(1)自然言語推論の形式化の研究、(2)前提・照応に代表される自然言語の文脈的推論の研究、(3)図形推論の論理学的・認知科学的研究を進めた。(1)に関しては、自然言語の量化・様相推論を扱う高階論理の推論体系を構築し、それをラムダ計算に基づく合成的意味論によって日本語の統語理論(組合せ範疇文法)と結びつけることに成功した。その成果は、"Building compositional semantics and higher-order inference system for a wide-coverage Japanese CCG parser"と題して、国際学会 EMNLP2016 で公表し、また成果の一部に基づいて国際会議での招待講演を2件行った。(2)に関して、型理論、特にイプシロン計算と依存型理論に基づく枠組みのもとで、前提と照応の統合的な分析を進展させ、それを量化・複数表現と述語の選択制限の分析に適用した。前提・照応に関する成果は、Springerから刊行された論文集 Modern Perspectives in Type Theoretical Semantics に収録され、量化・複数表現と述語の選択制限に関する成果は、形式意味論の国際会議LENLS13で公表された。(3)に関しては、一般化量化子 most を伴う推論について、言語的推論と図形推論の比較のもとで、その認知的特性を分析した。成果は "Human reasoning with proportional quantifiers and its support by diagrams" と題して、図形推論の国際会議Diagrams2016で公表された。また成果の一部に基づいて、"Diagrams, proofs, and natural reasoning with 'most'"と題する招待講演を行った。
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