研究課題/領域番号 |
26770010
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
寺本 剛 中央大学, 理工学部, 助教 (00707309)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 世代間倫理 / 技術選択 / 被ばく労働 |
研究実績の概要 |
平成26年度は次年度以降の具体的な考察のための準備作業として「世代間倫理の理論的考察」と「高レベル放射性廃棄物処分に関する世代間倫理問題の予備的考察」に着手した。 前者に関しては、現在世代の道義的責任についての考察を行った。長期的リスクを世代間で分配するにしても、その前提として長期的リスクを残した現在世代の道義的責任を明確にし、今後の科学技術の行使のための教訓としなければならない。こうした問題意識のもと、科学技術についての漸進主義的意思決定を推奨するDavid Collingridgeの議論を手がかりにして、科学技術についての倫理的な意思決定のあるべき姿を明らかにし、それに照らして現在世代の選択の問題性とその道義的責任の性質を明らかにした。その成果の一部を科研費基盤研究(C)「記述に根ざした技術の現象学的研究:技術の記述的探求と批判的視点の確立」(課題番号25370032、研究代表者 金光秀和)の平成26年度研究会にて発表した(寺本剛「ラージ・ステップ・テクノロジーとスモール・ステップ・テクノロジー」 )。 後者に関しては資料を収集して検討を加えている段階であるが、予想以上に作業が難航しており、十分な成果を上げることはできていない。これについては次年度もひきつづき取り組み、必要であれば研究協力者に協力を仰いで、成果を残したい。 なお、その代わりと言うわけではないが、現在行われている福島第一原子力発電所における被ばく労働の現状とそこに生じている世代内不公正の問題を「犠牲」という観点から検討し、その成果を応用哲学会第6回年次研究大会において発表した。(寺本剛「被曝労働についての倫理的考察」)。これは平成27年度に扱う予定だった「未来世代の被ばく労働についての考察」についての実質的な作業の一部にあたるものであり、次年度の課題を先取りしたものと位置づけることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「高レベル放射性廃棄物処分に関する世代間倫理問題の予備的考察」は文献の収集と分析に予想以上に時間がかかり、十分に進んでいない。もっとも、次年度の課題である「未来世代の被ばく労働についての考察」を一部先取りして行っているため、総体としてみれば、研究の進度は当初の予定と比べてわずかに遅れている程度と言える。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な推進の方針に変更はない。 平成27年度は「高レベル放射性廃棄物処分に関する世代間倫理問題の予備的考察」を進めることにまずは注力する。その成果を踏まえながら「高レベル放射性廃棄物処理・処分の手法の考察」へと移行していく。 加えて、今年度一部先取りして行った「未来世代の被ばく労働についての考察」を完遂させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究に必要となる図書の選定が難航したため、物品費の支出が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
必要な図書の選定を行い、その図書の購入費として使用する。研究の動向に応じて研究協力のための謝金としても利用する可能性がある。
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