差別概念の哲学的分析論に取り組んだ。本研究は近年の英語圏の議論を詳細に検討し、とくに現在主流である不利益説を批判的に検討し、差別現象の社会的な性質に着目する「意味説」の意義と重要性を明らかにした。 本研究の意義は、差別という社会的に重要な問題に対して、差別概念の分析を通してその悪質さが何に由来するかを明らかにした点にある。ただ差別の悪質さの評価のための根拠となる規範についての検討は今後の課題として残された。 本研究では現在の英語圏における規範理論または政治哲学分野の差別論を検討したが、今後はこの成果の上に、平等、自由、厚生などの概念との関係で差別の悪質さを評価する研究に取り組む予定である。
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