研究課題/領域番号 |
26770012
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
渡名喜 庸哲 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (40633540)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エマニュエル・レヴィナス / ジャン=ピエール・デュピュイ / ハンナ・アーレント / ギュンター・アンダース |
研究実績の概要 |
本年度は科研費研究課題の遂行のために以下を実施した。 研究活動としては、第一に、5月15日に、ニース大学名誉教授で物理学・科学哲学を専門とするジャン=マルク・レヴィ=ルブロン氏の来日に合わせ、研究会を開催した。豊橋技術科学大学講師の中村大介氏とともに、現代の科学哲学の課題についての最新の知見を提供いただき活発な議論を行なうことができた。第二に、8月8日に、アーレント研究会シンポジウム「アーレントと現代の科学・技術」にて、ハンナ・アーレントとギュンター・アンダースに関する発表を行った(その後、学会会報にて公刊された)。第三に、8月10日から31日にかけて、フランス・パリに出張し、国立図書館・専門書店等で最新の研究文献を調査・収集・精読することができた。第四に、9月20日の第10回ハイデガー・フォーラムにて、レヴィナスとハイデガーについての研究発表を行い、国内の専門家からの多くのコメントを得た(論文は2016年度に公刊予定)。第五に、1月30日に研究会を主宰し、横地徳広氏の近著『超越のエチカ ハイデガー・世界戦争・レヴィナス』をめぐる公開討論会を実施した。国内から各分野の研究者を招聘し、有益な議論の場を持つことができた。第六に、2月に早稲田大学および中央大学においてレヴィナスと戦争の問題について発表した。 研究成果の公表としては、上のほか、レヴィナスに関しては、斎藤慶典氏・小手川正二郎氏とともにレヴィナスの伝記として最も信頼できる著作であるサロモン・マルカ『評伝レヴィナス 生と痕跡』を翻訳出版した。また関連する文献の書評を3本執筆した。現代仏語圏倫理学に関しては、その第一人者とも言えるジャン=ピエール・デュピュイについて、共編著『カタストロフからの哲学』を公刊した。その他、関連する複数の論文の執筆・投稿を行なっており、次年度の公刊が待たれている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に提出した研究実施計画によれば、今年度は、第一に、フランス語圏の現代倫理学研究のうち、技術哲学、科学哲学、思想史、政治思想の四つの軸に関する研究状況の調査、第二に、フランスならびにベルギーにおける関連分野の研究者との意見交換を主たる内容としていた。 5月に実施したジャン=マルク・レヴィ=ルブロン氏を招いての研究会は、技術哲学・科学哲学に関する研究目的に沿うものであったし、また8月のフランス短期滞在時は研究状況の調査および関連研究者との意見公刊をすることができた。また、とりわけジャン=ピエール・デュピュイについての著書を共編著のかたちで公刊することができたのは特記すべき成果である。思想史に関しては、レヴィナス哲学を、ハイデガーやアーレント、アンダースとの関係のなかにおいて考察する作業を行った。政治哲学についても、レヴィナスと「戦争」という問題について研究を進め、その成果をシンポジウムにおいて公表した。 以上のとおり、研究実施計画におおむね沿ったかたちで順調に研究が遂行されていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度にあたるため、これまでの研究の総まとめを行なう。 とりわけ、レヴィナスに関する研究をまとめた単行本を仕上げて公刊することが第一の目的となる。また、第二の目的は、申請書にも記したように、現代フランスを中心的なフィールドとする倫理学研究の成果を取り入れ、「科学技術」と「人間」の関係に焦点を当てた研究を完成させることである。これについては、とりわけ「カタストロフ」という概念を軸に研究のとりまとめを行なっており、その成果についても単行本のかたで公刊することを目指す。 また、次年度においては、申請書に記したように、本研究課題のとりまとめつつ、今後の研究へと継続的に発展させるための研究ネットワークの構築を行なう予定である。そのために海外の研究者との連携を継続的にはかってゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた理由は、消耗品(図書)について、当初予定していたほどの支出がなされなかったためである。これは、今年度は、当初の計画以上に研究会の開催および研究成果の公表を行なったため、図書購入による支出については次年度に回すことにしたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、研究成果の公表・とりまとめを中心的な計画としているため、そのために必要な図書およびその他消耗品の購入のために当該助成金を充てる予定である。
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