研究課題/領域番号 |
26770013
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
小手川 正二郎 國學院大學, 文学部, 助教 (30728142)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 哲学 / 現象学 / フランス現象学 / レヴィナス / 分析哲学 / フェミニスト現象学 |
研究実績の概要 |
本年度は、フランス現象学の事象分析をフッサール以後の現象学研究や分析哲学との対比を軸に考察した。まずレヴィナスの現象学的観点の特徴を明らかにするために、「責任」というレヴィナスの根本概念に関して、分析哲学のアプローチとの比較検討を行い、パリで4月に行われた国際シンポジウム「レヴィナスと分析哲学」で発表した。また、メルロ=ポンティやアンリによって展開されたのとは異なる現象学的身体論の可能性を探るために、レヴィナスの身体論をフェミニスト現象学の延長線上で積極的に評価することを試み、5月と2016年3月に開催されたフェミニスト現象学のシンポジウムおよび9月のメルロ=ポンティサークルで発表し、論文投稿した。その際、哲学史的な観点からレヴィナスの身体論の広がりを示すために、ニーチェの身体論との対比を行い、12月に京都の国際シンポジウムで発表した。また、レヴィナスの真理論を分析哲学の真理論と対比する試みとして、B・ウィリアムズの著作(Truth and Truthfulness, Princeton University Press, 2002)とレヴィナスの議論を比較し、2016年3月にフッサール研究会で発表した。 以上の検討を通じて、フランス現象学の事象分析の内実を具体的に明らかにするという目的は一定の水準で遂行された。また当初の目的ではレヴィナス以外のフランス現象学者(アンリやマリオン)の分析をもう少し取り上げる予定であったが、分析哲学との比較やフェミニスト現象学との比較が実り多い形でなされうるのはレヴィナスの議論であるとの判断のもと、レヴィナスの議論を中心にした見当がなされたことを付言しておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に感情についての研究が進捗したため、今年度は身体論についての研究や分析哲学との比較に重点をおいて研究を行なうことができ、この点では予想以上の成果をあげることができた。ただしレヴィナス以外のフランス現象学の成果については、研究を進めてはいるものの、まだ本格的な比較検討および学会での発表にはいたっておらず、その点ではおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、これまでの成果を生かして、従来思弁的で晦渋と言われてきたフランス現象学の分析が、最先端の哲学的議論にも具体的な寄与をなしうることをより具体的な形で証明していくことを試みる。加えて、フランス現象学がもたらす知見や洞察は、たんなる学術的価値にとどまらず、ケアの臨床などにおける極めて実践的な価値を有するということを、フェミニスト現象学や現代の政治哲学との関連から描き出すことも試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初開催予定のワークショップなどが来年度に延期したこともあり、謝金などの支出予定を来年度に回す必要が出たため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の5月にレヴィナスと倫理学に関するワークショップを開催し、発表者の旅費等を支出する予定である。また上海、トゥールーズ、ソウルの国際学会での発表もすでに決まっているため、その旅費などに使用する予定である。
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