本研究は、20世紀後半にフランスで生じた現象学的哲学、とりわけ「神学的転回」以後の現象学の諸潮流に注目し、その哲学的意義を再評価することを目的とするものであった。フランスの現象学の多様な分析がどれほど具体的な事態に迫っているかを検討することで、現象学の思想史的研究に寄与すると共に、抽象的な思弁に陥りやすいフランス現象学の具体的な展開可能性を明らかにすることを試みた。より具体的には、レヴィナスの後期哲学を主たる手掛かりとして、性差、家族、責任という三つの主題に関して、現代の倫理学や政治哲学との連関や相違を示すことができた。
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