研究課題/領域番号 |
26770014
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
植村 玄輝 立正大学, 文学部, 研究員 (40727864)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感覚経験 / 知覚経験 / 現象学 / 実在論 / 非デカルト的実体二元論 |
研究実績の概要 |
本年度は、「初期現象学における感覚経験の関係説」というテーマの研究を行い、その成果を日本現象学会第36回研究大会における個人研究発表「現象学的実在論と感覚の関係説」として発信した。具体的には、感覚経験に関するインガルデンの見解を、その影響源である初期現象学における議論をたどり直して再構成することで、一つの哲学的な立場として提出することができた。また、本発表は同学会が編集する査読付きの学術誌『現象学年報』次号(第31号)への掲載が決定している(ただし最終版原稿は未提出)。そのため、感覚経験の関係説というこれまで知られていなかった立場が少なくとも選択肢の一つであるということは、現象学の専門家のあいだで認められたといってよいように思われる。
また、今年度のテーマに関連するより問題に関して国際学会で発表を二回行い、専門家からの助言や批判を得ることができた。第一の発表("Phenomenology in the Light of Phenomenology. A Case Study in Husserl's Hylomorphic Theory of Perceptual Experience")は、感覚経験の関係説が前提とする「知覚経験の統握説」の内実をより明らかにし、それを擁護するというものである。これを通じて、本年度の研究に欠かせないより基礎的な問題に関する論点を整理し、統握説が持つ心の形而上学としての側面に関して新たな光をあてることができた。第二の発表("Modest and Bold Ontologies for Gallagher/Zahavi’s ‘Naturalized’ Phenomenology")は、「現象学の自然化」に関する近年の試みを批判的に検討し、心や意識に関して現象学的なアプローチが採用しうる形而上学的な立場に大まかな見通しを与える内容の発表である。この発表は、本研究計画が最終的に目指す、非デカルト的な実体二元論の課題の再同定に関わる、予備的かつ基礎的な研究として位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載した研究発表「初期現象学における感覚経験の関係説」の内容は、交付申請書に記した研究目的や計画に大筋でしたがうものであり、本年度に達成すべきことはすべて達成されたとみなすことができる。たしかに本発表に即した研究論文は掲載が決定しているとはいえ最終版原稿が提出されていないという段階にあるが、これは『現象学年報』誌の編集方針およびスケジュールによるものであり、研究の遅れを示すものと解釈する必要はないように思われる。以上に加え、本研究に関連する問題について研究報告を行うことができたという事情に鑑みて、本年度の研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き交付申請書に記した計画に則り、2015年度は「知覚経験の行為者性」というテーマの研究に取り組む。具体的には、前年度に行うことができた基礎的な研究を踏まえつつ、「行為者性を備えたプロセスとしての知覚経験」に着目することの重要性を明らかにする研究を、従来の立場の批判的検討および現象学的な立場の擁護という二つの側面から進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
外貨レートの変動による誤差のため、書籍の購入額に差額が生じた。とはいえ、本年度の研究に必要な書籍はすべて購入しているため、これによって研究の遂行に特に支障は生じていない。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究に必要な書籍の購入費として使用する。
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