研究課題/領域番号 |
26770014
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
植村 玄輝 立正大学, 付置研究所, 研究員 (40727864)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 現象学 / 知覚経験 / 知覚の恒常性 / 意志経験 / 行為 / 動機づけ |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)前年度に掲載が確定していた査読付き論文「現象学的実在論と感覚の関係説」の最終盤原稿の作成、(2)「知覚経験の行為者性」というテーマの研究を行ったほか、三・四年次に行われるはずだった予定を前倒しして、(3)「意志経験における〈人〉の役割:意志の包括的な現象学を打ち立てる」というテーマの研究も開始した。 (1)について。初期現象学における感覚論が〈人〉の存在論にどのような含意を持つのかの指摘を含め、前年度の研究の成果を簡潔かつ過不足のないかたちで発信することができた。 (2)について。この研究の中心的なアイディアは、知覚経験を瞬間的な出来事の集積として捉えるのではなく、本質的に時間の幅を持つプロセスとして捉える点にある。この点を説得的に示すために、知覚の恒常性(perceptual constancy)に着目して、この現象を瞬間的な出来事の集積として分析する立場を批判する発表を、北欧現象学会にて行った。その成果を発信する論文は現在準備中である(この点については「現在までの進捗状況」および「今後の研究の推進方策 等」で後述する)。 (3)について。KU Leuven(ベルギー)のフッサール文庫を訪問し、フッサールが意志の現象学および行為論を論じた草稿群に関するの約一週間の文献調査を行ったほか、同草稿群の全集版の編者であるトーマス・フォンゲーア博士と本研究計画に関連するディスカッションを行った。また、LMU Munichでの行為の現象学に関する国際学会、University College Corkでの講演、University Collegeでの志向性と規範性に関する国際学会のそれぞれで、プフェンダーの動機づけ論、フッサールの意志の現象学、シュタインの動機づけ論についての研究発表を行った。また、フッサールの行為の現象学に関して展望を示す日本語論文(「行為と行為すること」、査読なし)も発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の(2)の研究については、当初の予定であった論文の投稿を年度内に達成できなかったため、やや遅れをとっていると判断せざるをえない。これは、北欧現象学会での研究発表およびその際に持つことができた欧州の専門家とのディスカッションを通じて、同研究の成果を説得的な論文にするためには相当量の追加作業が必要であることが明らかになったためである。
上述の(3)の研究を前倒しした理由も、いま述べた追加作業のなかに意志に関する研究が含まれていたことによる。こちらの研究に関しては、国際学会および国外の大学での招待講演でその成果を発信するなど、すでに多くの成果を上げることができた。
したがって研究の進捗状況を全体としてみた場合には、おおむね順調に進展していると判断して差し支えないように思われる。
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今後の研究の推進方策 |
上述の(3)の研究について。ミュンヘンでの学会発表にもとづく論文集の企画が同学会の主催者によって進められており、研究代表者もプフェンダーのの動機づけ論に関する英語論文をに寄稿することになっている。また、シュタインの動機づけ論についても、Alessandro Salice博士との英語の共著論文を作成する計画が進行中である。第三年次は、これら2編の論文の執筆に加え、フッサールの行為論に関する英語の論文の準備を進めたい。
上述の(2)の研究についても、関連する追加作業を進め、今年度中の論文投稿を目指す。
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