研究実績の概要 |
本年度の研究実績は、以下の三つに区分できる。(1)現象学的な知覚論に関する論文の作成・投稿、(2)「意志経験における〈人〉の役割:意志の包括的な現象学を打ち立てる」に関する研究、(3)意志との類比性を踏まえた感情の現象学に関する基礎的研究。 (1)について。知覚経験に関する研究は、計画上は第一・第二年次に行うものであったが、昨年(第二年次)の報告書の「現在までの進捗情況」で述べた通り、その成果を論文のかたちで発信するという課題が未達成であった。こうした事情を踏まえ、本年の研究では、インガルデンの知覚論を主題とした、現象学的な知覚論を明確化する論文"Demystifying Roman Ingarden's Purely intentional Objects of Perception"を作成し、日本における現象学研究に関する論文集(Shigeru Taguchi & Nicolas de Warren (eds.), Phenomenology in Japan, Springer)への寄稿論文として提出した(未出版)。 (2)について。計画を前倒しして昨年度から行なっていた本研究テーマについて、ここまでの成果を発信するものとして、"Motives in Experience. Pfander, Geiger, and Stein"という共著論文をAlessandro Salice博士(University College)と共同で作成し、現在準備中のAntonio Cimino (ed.), Phenomenology of Experienceという論文集(出版社未定)の原稿として提出した。 (3)について。これまでの研究を通じて、感情の現象学の成果を意志の現象学に応用するという着想にいたり、感情の志向的対象に関する研究を行った。
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