本年度の研究の中心は、意志と行為の現象学を論じる際の重要人物の一人である、アレクサンダー・プフェンダーの議論の検討にあった。それに加え、初期現象学における意志と行為の現象学や〈人〉の現象学に関して、より広い範囲に弥研究を行なった。その成果は以下のようにまとめられる。 (1)1911年の論考「動機と動機づけ」の再検討を行い、その成果となる英語論文を執筆した。同論文は、The Routledge Handbook of Phenomenology of Agencyに所収される予定である。 (2)また、昨年から開始した、意志と行為と深い関係にある感情に関する研究の一環として、プフェンダーの感情の現象学に取り組み、八重樫徹氏(広島工業大学)と共著で英語論文を作成した。同論文は、The Routledge Handbook of Phenomenology of Agency に所収される予定である。 (3)ゲルダ・ヴァルターによる社会的作用および共同行為の現象学についての研究も行った。その成果としては、社会的作用に関するヴァルターの見解がライナッハのみならずフッサールからも大きな影響を受けていることを示す英語論文(Alessandro Salice氏(University College Cork)との共著)を作成したほか、日本現象学会のシンポジウムにおける共同行為の現象学に関する提題がある(2018年度にこの提題に基づく論文が出版予定)。 (4)〈人〉の現象学をまた別の角度から追跡する研究として、コンラート=マルチウスによる感覚の現象学と実在論の擁護に関する研究も行い、その成果をメルロ=ポンティ・サークル研究大会のシンポジウムで発信した(同じ内容の論文が2018年度に出版した)。 (5)以上の研究の基礎をなすものとして、フッサール現象学に関する研究を行ない、その成果を論文として発信した。
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