研究課題/領域番号 |
26770015
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
唐澤 太輔 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 助教 (90609017)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイヤーズ / ケンブリッジ / テレパシー / ヒューマン・パーソナリティー |
研究実績の概要 |
英国心霊現象研究協会(The Society for Psychical Research 通称S.P.R)の重鎮であった、フレデリック.W.H.マイヤーズ(Frederick William Henry Myers 1843~1901年)最大の著作『ヒューマン・パーソナリティー Human Personality and Its Survival of Bodily Death vol,1 & 2』(1903、Kessinger Pub Co.)が、『S.P.R紀要』『S.P.R会報』及び、当時の新聞・広告などでどのように掲載・紹介・評価されていたかを調査した。 調査・研究は主に、英国・ケンブリッジ大学図書館(マイヤーズはケンブリッジ大学で学び、同校の講師を1865~1869年まで務めた)と、大英図書館において行った(2014年8月26日~9月11日)。ケンブリッジ大学図書館では、同館日本部長・小山騰氏に、大英図書館での調査では、龍谷大学・松居竜五教授に協力いただいた。 新聞における『ヒューマン・パーソナリティー』の書評・紹介文の他、マイヤーズの訃報を報じた様々な記事(新聞における追悼文など)や、マイヤーズによる「テレパシー」に関する最初期の論文などを収集することができた。さらに、しばしば心霊実験の舞台となったマイヤーズの家(Leckhampton House)の所在地を、S.P.Rのメンバーリストから割り出すことができた。また、彼の造語である「テレパシー telepathy」という言葉の初出書簡を確認することができた。 研究成果は、東洋大学エコ・フィロソフィ学際研究イニシアティブの紀要『エコ・フィロソフィ研究』第9号(2015年内刊行)で発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、2014年内に英国・ケンブリッジでの調査・研究を行うことができた。また、この調査・研究においては、ケンブリッジ大学図書館所蔵のS.P.Rメンバーリストを精査することで、日本人初のS.P.R会員(=姉崎正治)を発見することができたり、これまで詳細が分からなかったマイヤーズの自宅だった建物を見つけることができたりするなど、先行研究では知られていない新たな発見が多々あった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)井上円了らがS.P.R.に触発される形で発足させた「不思議研究会」の活動内容、及び日本におけるマイヤーズの評価を調べる。円了は、箕作元八、田中館愛橘、坪井正五郎らと共に、S.P.R.に触発され、1886年「不思議研究会」を作っている。その活動内容及び成果を『井上円了全集1~6巻』(1993、柏書房)から調べる。必要があれば、東洋大学井上円了記念学術センターへ赴き調査を行う。いつ頃から、日本において「テレパシー」あるいは「超常」といったマイヤーズの造語が普及し始めたのかを、「オカルト事件」を取り扱った当時の新聞を閲覧し(因みに南方熊楠は、このような記事に関して、まめに切抜を行っている)、また、心理学のみならず様々な超常現象の事例も扱っていた雑誌『変態心理』(1917~1926、日本精神医学会)を調べ、明らかにする。これらを調査することによって、当時、熊楠以外にも日本において、マイヤーズ及び『ヒューマン・パーソナリティー』に関心を寄せていた人物が出てくる可能性が十分にある。例えば積極的に『変態心理』に寄稿していた中村古峡(1881~1952年)等である。中村は熊楠とも親交があり、頻繁に書簡をやり取りしている。その往復書簡は未刊行であるが、南方熊楠翻字の会(東京・大坂)で翻刻済みである。そこにマイヤーズに対する言及があるかを調べる。 (2)『ヒューマン・パーソナリティー』の翻訳作業を行っていく。少なくとも、熊楠が論考などで参照した箇所は翻訳を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては、マイヤーズの調査・研究に集中し、井上円了等による、心霊研究に対する言説の研究を少ししか行わず、『井上円了全集』を購入する必要が生じなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
『井上円了全集』の購入。円了による、マイヤーズ及びS.P.Rに関する言説を精査する。
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