研究実績の概要 |
まず、英国心霊現象研究協会(The Society for Psychical Research、以下SPR)が発足した当時、日本において、フレデリック・マイヤーズ(Frederick William Henry Myers, 1843-1901)及びSPRの活動を周知していたであろう人物の言説を調査した。例えば、箕作元八(1862-1919、歴史学者)は、1885年『東洋学芸雑誌』で、SPRの活動を正確に報告している。その後、箕作は、井上円了(1858-1919)とともに「不思議研究会」というSPRと同じような研究会を発足させている。夏目漱石(1867-1916)も『思い出す事など』(1910-1911)において、マイヤーズについて触れている。他には、日本人初のSPR会員・姉崎正治(号・嘲風、宗教学者、東京大学図書館長、1873-1949年)がいる。現在日本においては、ほとんど知名度のないマイヤーズおよびSPRであるが、調査の結果、南方や漱石が生きた時代(明治~昭和初期)にかけては、少なくとも知識人の内では多少の知名度はあったことがわかった。 次に、マイヤーズによる大著、“Human Personality and Its Survival of Bodily Death vol,1 & 2”(以下HP)を精読することで、南方が那智山において何度か体験した「体外離脱」に関する言説が、HPに書かれている内容の一部と極めて類似していることがわかった。南方は、この頃非常に熱心にHPを読んでいた。南方が自身の論考及び書簡で参照したであろうHPの箇所については、特定し、翻訳を行い、その一部は、『エコ・フィロソフィ研究』第9号と10号(東洋大学)において発表した。これによって、南方がどのような心霊現象に関心があったのか、その一端を知ることが可能になった。
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