依存症患者の依存行動に限定して責任を免除するという部分的帰責の問題は、依存症の脳神経科学倫理学における最重要課題のひとつである。本研究で目指したのは、現在続々と公表されている依存症の脳神経科学的理解をサーベイし、それと従来の責任理論をつき合わせることで、部分的帰責を可能にする現実的な責任の捉え方を示すことである。 得られた知見は次の2点である。(1)部分的帰責のためには、人間の責任能力を、行為一般に共通して行使される全般的能力と、個別の課題に限定的にはたらく局所的能力に区分することが必要であること。(2)帰責には規範的な人間像が必要で、脳神経科学的知見はそれを崩すことで免責に寄与すること。
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