本研究の目的は、工学倫理において技術者の配慮対象となる「環境」が指す範囲を明確化することによって、専門家としての技術者が環境問題において果たすべき役割と責任を明らかにすることにあった。研究の結果、次の二点が明らかになった。第一に、工学倫理の分野において、技術者の配慮対象とされている「環境」は、限定されたかたちで捉えられているということである。第二に、環境配慮義務をどの程度重視するかは、他の価値規範との関係性や現実の状況に応じて相対的に変化するということである。今後、工学倫理は「環境」概念をより広い視点で捉えた上で、技術者の環境配慮義務について再検討を行う必要がある。
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