本研究では、インド仏教最後期の論理学者モークシャーカラグプタ(12世紀頃)の著作『タルカバーシャー』(論理の言葉)について、インド各地に所蔵されるサンスクリット語写本を蒐集し、本書のチベット語訳も参照しつつ、原典テキストの批判校訂版を作成した。同時に、同書が大きく依存する、仏教論理学の大成者ダルマキールティ(7世紀頃)の著作『ニヤーヤビンドゥ』(論理の滴)についても、ダルモーッタラ(8世紀頃)の注釈書とともに調査し、上記『タルカバーシャー』との並行文を収集した。これらの成果を合わせて、インド仏教思想のひとつの到達点を窺うことのできる、仏教論理学の定義的用例を網羅した述語集を作成した。
|