本研究の目的は〈般若経〉編纂過程の解明にある。より具体的には、現存する梵本『八千頌般若』の形成過程の解明を目的とする。従来の研究が、初期大乗仏教研究の文脈内で『八千頌』を扱う研究であったのに対し、本研究では初期から後期大乗仏教研究の文脈において『八千頌』を扱う。本研究の成果として、チベット語訳『八千頌般若』には3種のヴァージョンが現存していること、またそれらは同経典における段階的な改編の状況を示すものであることを指摘した。さらに、本研究期間において、〈般若経〉の形成過程を明らかにする上で重要となる、テンパンマ系のチベット語訳『八千頌般若』(ロンドン写本)のテキストデータを作成した。
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