研究課題/領域番号 |
26770024
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
野呂 靖 龍谷大学, 文学部, 講師 (70619220)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東大寺 / 根来寺 / 論義 / 華厳五教章 |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究の目的である中世後期の真言僧らによる華厳学理解を解明するための基盤となる資料の翻刻・対校を実施した。 まず、前年度より進めていた東大寺戒壇院志玉の『五教章聞書』六帖(智積院蔵)の翻刻、および刊本『五教章見聞』との対校を終えた。また、同じく志玉の東大寺講説について大須真福寺の任俊が記録した『五教章視聴記』(大須真福寺所蔵)の翻刻を開始した。本資料は全六帖と分量が大きいが、すでに前年度に書誌的概要について論文発表を行っているものであり順調に進められている。また、同一次期の講説である『五教章聞書』との比較を行っているが、両資料の内容は必ずしも一致せず、とくに『五教章視聴記』が真言義への言及がきわめて多く、「和尚云」として示される志玉の見解も詳細であるなど特徴が認められた。詳細な教学内容の比較検討は次年度の課題であるが、こうした比較によって講説の聴講者による教学理解の相違がテキスト形成にどのように反映しているかを分析することが可能であり、今年度の資料整備によって見通しを得ることができたのが大きな成果である。 また今年度は、志玉による『五教章』講説、および根来寺僧の記録活動の前提となった高山寺系統の真言・華厳理解について整理を行い、とくに根来寺中性院頼瑜と明恵門下の順性房高信の教学との比較研究を進め、国際仏教学大学院大学日本古写経研究所平成27年度第一回公開研究会(2015年5月9日)にて、「真言宗義誠に味わいあり―頼瑜に与えた明恵門下の密教理解―」として研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料翻刻を中心とする研究計画通り、概ね順調に進展している。なお、当初今年度に智積院新文庫蔵『五教章私』についても翻刻予定であったが、『五教章視聴記』など大部の文献の正確な読解を優先したため若干の遅れが生じているが、本資料は少部でもあり、次年度に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き『五教章視聴記』(大須真福寺所蔵)の翻刻を実施する。また志玉の華厳思想の前提となったと考えられる鎌倉期から室町期までの東大寺における論義資料について東大寺図書館所蔵本を中心に調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は資料翻刻を中心としたため物品費の支出が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度については、とくに関連資料を所蔵する寺院・図書館への調査旅費が必要となるため、研究遂行状況をみきわめながら当該分として支出していきたい。
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