今年度はまず、前年度に収集した、イタリア宗教史学(20世紀のイタリアで展開した宗教研究)とその隣接分野(民族学・民俗学・歴史学)の文献資料をもとに、「呪術」概念の考察を行った。その成果は、江川純一・久保田浩『「呪術」の呪縛【上】』(リトン)として刊行されたが、久保田浩との共著論文「「呪術」概念再考に向けて ―文化史・宗教史叙述のための一試論―」における呪術研究の学問史の部分に、本研究課題の活動が特に生かされている。 また、イタリア宗教史学派の宗教理解という主題で、二つの研究発表(招待講演「20世紀宗教学の《トライアングル》 ―ペッタッツォーニ、デ・マルティーノ、エリアーデ」、学会発表「ペッタッツォーニの最高存在論 ─日本宗教研究を中心に」)を行った。両発表において、「宗教」、「呪術」、「儀礼」、「神話」を総合的に、歴史的地平において考察するという、イタリア宗教史学の特徴を明確にすることができた。 最後に、イタリア宗教史学をラッファエーレ・ペッタッツォーニから継承した、エルネスト・デ・マルティーノについての現地調査を南イタリアで実施した。具体的には、彼が教鞭を執った場所(バーリ)、そして、呪術についての現地調査を行った場所(ガラティーナ)にて、文献調査と聞き取り調査を実施し、一次資料を得た。本調査の結果は、2016年度刊行決定済みの、江川純一・久保田浩『「呪術」の呪縛【下】』(リトン)で公開する。
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