研究課題/領域番号 |
26770028
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
下村 育世 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (00723173)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 暦 / 日本宗教史 / 日本近代史 / 宗教社会学 / 改暦 / 明治国家 / 伊勢神宮 / 東京天文台 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、明治政府が行った暦にかかわる政策の動向を把握するために、暦を管轄する省庁(主に内務省、文部省)の公文書(主に国立公文書館所蔵の「太政類典」「公文録」「公文類聚」など)の読み込みを行い、暦関係の法令を網羅的に調査するとともに、法令化されなかった請願や建白書、伺などにも目を配りながら、近代の暦の動向がわかる精緻な年表の作成を重点的に進めた。調査を進めるうちに、戦前まで編暦を主管していた東京天文台(現国立天文台)にも暦にかかわる公文書が残されていることがわかってきたため、国立天文台図書室の所蔵にかかる公文書やその他業務関係史料の調査も行い、暦の編纂において業務上作成された史料の読み込みもあわせて行った。また暦にかかわる基礎的文献の購入と、国会図書館等における調査で収集した文献および論文により、基本情報の把握と収集に努めた。
こうした調査と平行して、研究成果の公表も随時進めていった。本年の業績としては、主に内務省の年報などを典拠として、改暦から終戦直後までの毎年の頒暦数という基礎データの公表も兼ねるべく、「官暦」の頒布数を主題とした論文を執筆公開した。そして次年度以降に公表予定の学術論文として、国立天文台図書室所蔵にかかる行政文書を用いて、明治中期の旧暦と新暦の使用状況についての論文の執筆を行った。これらの研究活動の成果を踏まえつつ、次年度以降に公表予定の学術論文の執筆準備もさらに進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の当初の研究計画で最も重要なものとして挙げていた、近代以降の暦の歴史を法令に準拠しながら詳細な年表を作成することについては、おおよそ基礎的史料の収集は計画通り進み、順調に進展している。結果として、明治改暦以降終戦直後までの暦の頒暦および編暦を主管した省庁の変遷や、頒暦の仕方のおおよその変遷などについて、次年度の研究の基礎となる多くの史料を収集することができた。さらにこの作業を実際に進めていくうちに、先に述べたように国立天文台図書室の所蔵史料調査もあわせて行うようになった。そしてこの国立天文台における調査において、当初の計画以上に暦の編纂を明らかにするような厖大な史料を収集することができた。 当初は次年度以降に論文執筆をする予定であったが、これらの基礎的調査の過程において収集された史料を元に、頒暦数についての論文を執筆し今年度公開できた。さらに、国立天文台の史料調査から見出した史料を元に、次年度以降に公開予定の論文執筆にも着手した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成27年度は前年度に引き続き、近代以降の暦の歴史を、法令に準拠しながら明らかにする史料調査を進めていく。これらは、近代の暦に関する基礎研究と位置づけられるものであるから、今年度も引き続き適宜必要な機関に調査に赴き、基礎史料の収集に努めたい。さらに暦の歴史と明治国家の宗教政策との関連についても調査を行っていく計画である。その一環として、明治以降の暦の誌面調査を予定しており、国家祭祀である祝祭日の新たな追加や、全国の神社の例祭日の加筆といった内容の加減の変遷を追うことで、近代天皇制イデオロギー形成にともなって神社と宗教のヒエラルキーが形作られていくなりゆきが誌面においていかなる形で反映されているかを解明する予定である。これらの成果を学術論文の執筆という形で公開していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の経費のうち公文書の印刷・複写依頼費が最大となっている。とりわけ本研究では国立公文書館所蔵の史料を主とする研究を進めており、同館への印刷・複写依頼を行った上で、非デジタル化の史料の撮影依頼および用紙出力(1 枚120 円)が必須である。ところが近年、同館は公文書のデジタル化作業を加速させており、研究計画時点では予想されないほどのスピードでのデジタル化が進んでおり、デジタルアーカイブ上における公文書の調査が容易になってきている。もちろん全ての公文書がデジタル化されているわけではないため、必要な公文書がデジタル化されているか否かを選別する作業をした上で、非デジタル化史料のみを同館へ印刷・複写依頼を行う必要がある。この選別作業が、同館のデジタル化作業の加速度的進行といったことも加わり、当初の計画以上に時間がかかっており、同館へ印刷・複写を依頼していないために次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究は、公文書を主たる史料として明治期の暦の研究をおこなっているため、公文書の閲覧および撮影依頼・用紙出力は必須である。というのも公文書は多くの場合、何度も加筆訂正がなされ、欄外には小さな字でのコメントが見られるため、多くの公文書を対象とする場合、デジタル画像でのみの研究は非常に困難であるからである。 次年度は、本年度にひきつづきデジタル化されている史料については用紙出力を行った上で(1枚30円ほど)、新たに、国立公文書館などに所蔵が見られる非デジタル化史料について、同館などに撮影および用紙出力(国立公文書館であれば1枚120円)を依頼することで昨年度の予算も含めて使用する計画としている。
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