研究最終年度の平成27年度は、昨年度までの研究成果を踏まえたうえで、研究計画を遂行した。
調査においては、前年度に引き続き、近代以降の暦の基礎研究と位置づけられる、暦の歴史を法令に準拠しながら明らかにする史料調査を進めた(国立公文書館等)。前年度の調査で既に、戦前まで編暦を主管していた東京天文台(現国立天文台)にも暦にかかわる公文書が残されていることが判明したため、国立天文台図書室所蔵にかかる公文書やその他業務関係史料のうち、とりわけ暦の編纂において業務上作成された史料類の調査も引き続き行った。また頒暦を主管していた神宮における史料調査にも着手し、神宮文庫での調査も行い、神部署長の寄贈文書類などにあたった。特筆できる調査上の成果としては、国立天文台から見つかった、東京天文台の初代台長寺尾寿が作成した質問紙に基づき、旧暦と新暦の使用状況を明治22年に全国調査した結果を編綴した薄冊群(行政文書)である。これらは新旧暦の使用状況を共時的に全国規模で俯瞰できる貴重な史料ということができるし、新旧暦の使用状況の全国調査としては唯一の調査であったと考えられるが、これまでほとんど知られることがなかった。
上記の研究調査に基づき、その成果を論文等で公表した。国立天文台図書館所蔵の旧暦・新暦の使用状況についての史料調査から得られた研究成果の一部については、史料的価値の報告も兼ねて、日本宗教学会において口頭発表を行った。これら口頭発表の内容については、平成28年度以降に複数本の論文として公表することを予定している。
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