研究課題/領域番号 |
26770036
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
佐藤 貴史 北海学園大学, 人文学部, 准教授 (70445138)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フランツ・ローゼンツヴァイク / レオ・シュトラウス / 自由ユダヤ学院 / ユダヤ学促進協会 / ユダヤ学 / 歴史批判 / ユダヤ性 |
研究実績の概要 |
本年度は19世紀から20世紀にかけてドイツに成立したユダヤ学やその諸組織を、近代ユダヤ人のアイデンティティの問題や学問理解の角度から考察した。次の2点が本年度の研究実績である。 1.科研費の獲得と支援によって執筆に弾みがついたことで、26年度に脱稿した『ドイツ・ユダヤ思想の光芒』(岩波書店)が出版された。そのなかの一章で自由ユダヤ学院を集中的に論じたが、そのさい明らかになったのは自由ユダヤ学院はフランクフルト学派のような一定の理念を共有した集団というよりも、緩やかに結びついた「ユダヤ的知のネットワーク」と理解することができるという点である。またレオ・シュトラウスの議論を参照しながら、ローゼンツヴァイクの自由ユダヤ学院が彼の政治的行為であったことも明らかにし、従来の非政治的思想家というローゼンツヴァイク像を相対化することができた。 2.上記の自由ユダヤ学院だけでなく、ユダヤ学促進協会という組織も検討した。これによってこれまで単独で研究されてきた自由ユダヤ学院の存在を比較制度ないしは比較思想的に分析することが可能になった。また、ユダヤ教を研究するために創設された組織は、19世紀ドイツに産声を上げたユダヤ学の性格を大きく反映させることになった点も明らかになった。ユダヤ学と組織の関係のなかには、単純にユダヤ教を歴史批判的に研究する学問運動とは言えない、非常に複雑な性格を確認することができた。それはユダヤ教の歴史批判的研究という理念とは別に、ユダヤ教を世俗的に研究することの過剰な負担によって生み出された緊張状態や学問の変容であり、20世紀のドイツ・ユダヤ思想史は19世紀のユダヤ学の成立との関係において緻密に分析されなけれなばらないことを再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『ドイツ・ユダヤ思想の光芒』が出版されたことでいくつかの重要な意見を得ることができ、また研究目的として設定した自由ユダヤ学院やローゼンツヴァイクの政治的行為の内実も明らかにすることができた。くわえて宗教学会での発表を通して、より広い視点から19世紀から20世紀にかけてのドイツのユダヤ教研究とそのために設立された組織の状況について深く掘り下げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画にしたがって研究を進める。とくにユダヤ・ルネサンスが近代への応答という意味での批判的役割を果たしていたことやその現代的意義を総合的にまとめる予定である。
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