本研究は、明治期の日本において「共和主義(republicanism)」やそれに類する語を積極的な概念として用いた事例を調査し、その表象がもった社会共同体構想の歴史的意義や可能性を考察したものである。その特徴は、「共和主義」周辺の概念が、明治日本でどのように理解されたのか、その意味範囲を実証的に確かめるという方法にあり、近代日本における「共和主義」の受容史の一部を跡づけたことにある。具体的には、中江兆民、内村鑑三、木下尚江などといった面々を中心に、当時の国家体制と法律の範囲内で用いられた「共和主義」をめぐる議論を整理し、その用法の背後に控える思想史的ルーツとの関連を考証した。
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