研究課題/領域番号 |
26770040
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研究機関 | 武蔵野音楽大学 |
研究代表者 |
堀 朋平 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (10723398)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シューベルト / ロマン主義 / 親密性 / リンツ / ヴィーン / インスブルック |
研究実績の概要 |
シューベルトの音楽と友人の思想の接点を主題とする本研究にとって、今年度の活動は、その基礎となる大きな成果をあげることができた。三つの系列に沿って成果を報告する。 第一に、親友ヨハン・マイアホーファーによる未公刊の連作詩集『太陽の都』(1821年)を読解し、その詩と美学を解明した学術論文が、機関誌『音楽学』に掲載された(2015年3月)。当該の詩集がいかにシューベルト本人の美学と響きあっているかを解き明かしたこの論考は、本研究が照準する親友ヨハン・ゼンの詩と美学を探求する際に応用されるべき強力な基盤の一つである。 第二に、シューベルトの多くの友人を輩出したオーストリアの中都市リンツに赴いて、各図書館や博物館を実地調査した(2014年8月)。とりわけ親友ヨーゼフ・シュパウンの弟アントンによる業績(とりわけその民謡論)と、彼による当地の文化への多大な寄与を学べた点、さらにはシューベルト関係の史跡を訪ねることができた点で、本研究にとって基礎的な史実を体感することのできる、貴重な出張であった。 第三に、キリスト教音楽を主題とするシンポジウム(2015年2月)をはじめとする公開研究会に複数参加し、シューベルトの音楽がいかに友人との交流によって涵養されたかを、研究発表の形でアウトプットすることができた。こうした機会は、ともすれば研究者のパースペクティヴに極限されがちな傾向が、(専門外の研究者も数多い)聴き手を想定することで拡げられ、さらにそれが今後の研究方針に大きくフィードバックされる意味で、得難いものであると実感された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
海外出張による実地調査と学術論文の執筆を遂行できたことに加え、外部より委託される講演や執筆等の仕事により、当初は考えていなかった論点に気づき、研究の裾野が拡がったとの実感を得られたため。3年間の研究のうち2014年度は初年度であったこともあり、こうした手ごたえは今後の研究を発展させるために貴重である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には今年度と同様、上記の報告した三つの系列で研究を継続する。ただし実地調査はリンツではなく、ゼンの故郷インスブルックあるいは関連資料のあるミュンヘン、ないしシューベルトと縁の深いグラーツ、さらには関連資料と史蹟が散在する近隣のドイツおよびスイスの諸都市となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表に必要な楽譜作成の外部委託その他のために「人件費・謝金」を計上していたものの、これが当初の計画に比して少額だったため、あるいは委託相手が謝金を受けるのに適当でないと判断されたため、支出そのものが発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度において上記の「謝金」項目は多く発生する見込みである。ただし、2014年度と同じく委託相手が謝金を受けるのに適当でないと判断された場合、計画の大幅な変更が生じない程度で、予定額を物品費および旅費に補填する可能性もある。
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