フランツ・シューベルトの音楽づくりに友人が果たした役割を具体的に明らかにする本研究は、2015年度の実績において集大成ともいえる成果を単著において出すことができた。これを引き継ぐかたちで、さらに2016年度は、大きく分けて2つの路線で成果があがった。 第一に、シューベルトのオペラとしては最後の完成作である《フィエラブラス》の研究を行った(学会発表)。親友の兄ヨーゼフ・クーペルヴィーザーの台本になるこのオペラは、「オリエンタリズム」「パターナリズム」「父なるものからの若者の自立」といった広範なテーマを扱っており、台本草稿の分析から、シューベルト自身もそれらのテーマに共振しつつ作品が仕上げられていった過程が明らかになった。 第二に、本プロジェクトをいわば裏から支えるものとして、西洋の作曲家研究を翻訳する企画を2つほど進めてきた。モーツァルトの演奏論とシューベルトの伝記を主題とするそれらの翻訳は、所期の目的どおり、どちらも書籍として公表された。
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