研究課題/領域番号 |
26770042
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
土田 牧子 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (30466958)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歌舞伎 / 小芝居 / 音楽演出 / 女役者 / 竹本 / 新派 |
研究実績の概要 |
1.付帳資料の整理・データベース化 昨年度にひきつづき、松竹大谷図書館が所蔵している「杵屋花叟旧蔵付帳コレクション」の調査整理とデータベース化をおこなかった。当該年度は100冊611作品について調査を行った。 2.音楽演出の分析については以下の二点に分けて行った。 ●女役者、中村歌扇の録音にみる音楽演出の分析:中村歌扇が録音したSPレコードから、歌扇が当たり役として演じた『伽羅先代萩』と『恋女房染分手綱』における竹本(義太夫節)の詞章を明らかにし、それを現行の歌舞伎や当時の大歌舞伎と比較した。その結果、①SP録音は現行歌舞伎と比べると大幅に省略されているが、録音上の制限によるものと思われること、②省略部分を除くと、現行と共通する箇所が多いこと、③『先代萩』については、人形浄瑠璃のテクストと一致する箇所が多いこと、④クドキなどにおける竹本とセリフの掛合には、現行や当時の大歌舞伎の役者による録音との違いが見られること、⑤歌扇は大歌舞伎に倣ったオーソドックスな演出を主としていたようであること、⑥『恋女房染分手綱』の幕切の演出に上方歌舞伎の影響を思わせる演出見られたことなどを明らかにした。この検証結果は『日本伝統音楽研究』(京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター紀要)に発表する予定である。 ●新派の音楽演出の分析:堅田喜三代師が所蔵しておられる新派の付帳(音楽演出の覚書)の整理を行った。また併せて、1.で整理した大谷図書館の「杵屋花叟旧蔵付帳コレクション」に含まれる小芝居の新派の付帳を選び出し、翻刻を行った。これにより、新派の音楽演出の分析に向けての準備が整ったことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
付帳の調査整理およびデータベース化については、ほぼ順調に進んでいると言えよう。ただ、当初わかっていたよりも資料の数が多く、また上演情報についても不記載のものが多いため、今後のデータベースの公開に向けての準備はやや難航する可能性がある。 音楽分析に関しては、女役者の音楽演出について論文を書けたことが大きな成果である。その分、新派についての研究成果は若干の遅れがあると言わざるを得ないが、28年度に充分取り戻せる程度のものと考えている。そのため、おおむね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
1.付帳の調査整理については、引き続き行う。一方で、公開に向けての準備にもしっかりと時間を割いていく必要がある。 2.新派の音楽演出に関する検証を進める。新派の代表作ともいえる『婦系図』の音楽演出が定着していく様相を、新聞・雑誌記事や付帳の変遷から追う。そのうえで、小芝居における新派と大劇場における新派の比較を行う。また、小芝居と大歌舞伎との歌舞伎作品の比較も行い、小芝居ならではの特徴を明らかにしていきたい。
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