研究課題/領域番号 |
26770044
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 均 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (60510683)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | テアトロクラシー / デモクラシー / 芸術と政治 / プラトン |
研究実績の概要 |
当該年度は、これまで2年間の研究にもとづいて、一方では研究の概要を学会・研究会において発表するとともに、他方で、個々の部分の研究成果を論文としてまとめる作業を行った。 研究の概要は、2016年6月の「コミュニケーションデザイン研究会」において、また、同年7月の国際美学会議において発表した。 個々の部分の研究成果としては、2017年3月に発行された『a+a 美学研究』第10号において、プラトン『法律』における「テアトロクラティア」の用法をとりあげた。歌舞における大衆の好みの支配である「テアトロクラティア」が、政治における「デモクラティア」へと展開したことについて批判したプラントが、それに対していかなる歌舞のあり方を提起したのかを検証した。さらに、この議論の枠組み自体を逸脱するような論点が、ポリス全体を一つの悲劇としてみるという思考に含まれていることを指摘した。 さらに、プラトン哲学における「テアトロクラティアへの嫌悪」と呼べる観念が、現代においては参加型アートをめぐる言説において見出されることを指摘する論考を、共著"Bruchlinien Europas"において発表した。この論考では、ジャック・ランシエールが『哲学者とその貧者たち』において、プラトンの「テアトロクラティア」批判をマルクスのルンペンプロレタリアート批判と接続していることを踏まえたうえで、さらにこのトポスを、現代美術の批評における、「専門的」芸術家と「一般」参加者との関係の語られ方にも見出すことを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、研究課題が包括する領域について、その全体像を描くとともに、個々の部分について精密な検討を行い論文として発表してきた。 全体像についてはほぼ期待通りの成果が得られており、個々の部分についても、論文の発表を開始しており、着実な成果を上げつつあると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究課題の個々の部分、とりわけ近代における「テアトロクラティア」批判の実相の詳述に注力する。 また、研究を総括するために、この研究領域における代表的な研究者であるクリストフ・メンケ氏(フランクフルト大学)を招へいし、日本の研究者とともにシンポジウムを開催することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に海外から研究者を招へいし、また国内の研究者の協力を得て国際研究集会を開催する計画である。また、その研究成果を収録した雑誌を刊行する計画である。 以上の計画のために必要な予算を確保し、さらに資料調査・研究発表の活動を行うために、次年度使用額として繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に海外から研究者を招へいし、また国内の研究者の協力を得て国際研究集会を開催する計画である。次年度使用額と、翌年度分として請求した助成金とを合わせて、海外から招へいする研究者および国内の研究協力者の旅費・謝金、通訳・翻訳の謝金、会場準備・運営スタッフのアルバイト代に充てる。 また、その研究成果を収録した雑誌を刊行する計画であり、その編集・出版の経費にも充当する予定である。
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