最終年度は、前年度までに確認された事項を踏まえつつフィギュールの対称性の分類方法を確定し、さらに対称性の幾何学的特徴や時間的特徴について、いくつかの類型を区分した。さらに、これまで行ってきた舞踏種や振付家ごとの傾向の考察、あるいは舞踏会用振付と劇場用振付の対比に加え、より詳細な観察を可能とするため、クーラントとメヌエットという2つの舞踏種に特に着目した比較を行った。この2種は、舞踏会舞踏における中心的な舞踏として栄えた舞踏種である。結果、後者の方がより多様なフィギュールを示すことが確認された。さらに、用いられるパとフィギュールの関連についても、それぞれ異なった傾向が見られた。 また、最終年度の調査から、踊り手の動作に即して同時的に形成される対称性のみならず、動作の結果として想起される軌跡の形態や対称性の重要性も明らかになった。これは、舞踏譜の1ページに記譜される動きが何らかのまとまりとして意識されるということに繋がる。そして、こうしたまとまりを明確に把握するためには、即物的に言えば、舞踏譜のページの変わり目をどのようにして印象づけるかが重要になる。 まさにこの点で、伴奏舞曲が舞踏のフィギュールと関連を持つことが確認された。ページの変わり目の認識は、しばしば踊り手の動きと伴奏音楽の楽節的な区分との協働によって明示されるのである。この点に加え、振付における動作の対称的反復と、伴奏舞曲の動機の反復の間に見られる関連が、舞踏のフィギュールと伴奏舞曲を結びつける要素として指摘された。
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