期間延長後の2016年度は、計画の遅れを取り戻すことに注力した。行なった調査研究は下記の通りである。 まず、サン・シモン主義思想と19世紀の都市計画・交通網整備の基盤にある思想との分析を行なった。それとともに、本研究課題とその前史であるルドゥ、サド、レティフ、フーリエらの「建築を通じた社会改革案」との影響関係の分析や比較を行なった。この成果の一部は、2017年3月刊行の分担執筆書籍『破壊のあとの都市空間:ポスト・カタストロフィーの記憶(神奈川大学人文学研究叢書39)』に依頼を受けて寄稿した論考「瞬間と持続、暴力と審美化の間で」と、2017年7月刊行予定の単著『ユートピア都市の書法:クロード=ニコラ・ルドゥの建築思想』に収録されている。 また、18世紀後半から19世紀前半の科学的言説と建築・都市構想の双方における「(空気・人・交通の)流れ」や「循環」という概念の共通性について、主に学校建築と病院建築、またパリでの大規模火災発生後の都市構想についてのテクストを中心に分析した。 2017年3月にはフランス(パリ)に滞在し、予定の資料調査を行なった。 さらに、研究計画の根底にある「テクストとイメージと空間の関連性」という問題意識に基づき、国際美学会にて日本近代の文学と挿絵・絵画に現れ出た「夜の都市と幻想」のモティーフを分析した口頭発表「Nocturnal Reveries in the Modern City: From Japanese Literature and Illustrations in the Early Showa Period」を行なった。また同様の問題関心を、依頼執筆の論考「人工知能の都市表象」(『10+1』オンライン版)でも展開した。
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