研究課題
本科研による今年度最大の成果は、10月に東京外国語大学にて開催されたThe 3rd International Colloquium The Middle Ages seen from other horizons(第三回国際コロキウム「異なる視野から見たヨーロッパ中世」)および特別セミナー「〝ムデハリスモ〟と〝モサラビスモ〟」である。メキシコ、アルゼンチン、スペイン、ポルトガル、イタリアで活躍する歴史学、美術史学、ジェンダー研究などの研究者九名(うち二名はビデオ参加)と日本の歴史学、美術史学、建築史学の研究者六名が集い、四日間にわたって報告・議論が行われた。なお本コロキウムの成果は、2018年度にe-bookとして公開予定である。同じく2017年10月には、スペイン史学会第39回大会「ムデハルとは何か?―中世スペインの宗教・文化的多様性をめぐる議論と展望」に招聘されて「『ムデハル美術』を振り返る―その功罪をめぐって」と題する報告を行った。マドリードで刊行された論文集には、スペイン美術史における「ムデハル美術」の位置づけとナショナル・アイデンティティとの関係を探る考察を寄せた。ほかに、ムデハル美術とも関係の深いモサラベ建築を扱った本邦初の著書への書評論文、およびカタルーニャにおける中世美術の保存・評価をめぐる論考を著した。研究期間全体を通じて、日本で未開拓分野であったムデハル美術に取り組むなかで、ムデハルについてはいまだ定説に至っていない点が数多く残されていることが明らかとなった。そのため、もっぱら研究史とそこから見える問題点を整理することに時間を割く必要が生じ、個別の作品研究に踏み込むには至らなかった。しかし国際研究集会への参加や主催を通して各地の第一線の研究者たちとの連携を深められたことは、この先の研究の進展に大きく寄与するとの確信を得ている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
建築史学
巻: 70 ページ: 106-114