研究課題/領域番号 |
26770051
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河内 華子 大阪大学, 文学研究科, 助教 (20709539)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 人的ネットワーク / 移民芸術家 / 商人 / ロンドン / アントウェルペン / ケルン / ネーデルラント |
研究実績の概要 |
本研究は、ヘルドルプ・ホルツィウス(以下、ヘルドルプと称する)とその2人の息子の活動を、人的ネットワークという視点から明らかにするものである。初年度の研究では、特にヘルドルプと息子の一人であるヨーリス(英:ジョージ)に焦点を絞り、それぞれの移民先での人的ネットワークについて明らかにするための調査を行った。 ベルギーでの調査(5月・8月)では、アントウェルペンとルーヴェンの古文書館および大学図書館を訪れ、ケルンでホルツィウスが交流を持ったと考えられる人物たちに関する古文書史料・文献の収集を行った。その結果、主にデル・プラート一族をはじめとするネーデルラント商人の活動に関する情報がさらに広範囲にわたって入手できた。また、ホルツィウスの師のフランス・フランケン一世の研究における第一人者であるナターシャ・ペーテルス博士と面会し、ケルン移住後のホルツィウスとフランケン工房との交流について意見を交換し、最新の研究の動向についてご教示いただくなど、有益な研究指導を受けることができた。 イギリスでの調査(8-9月)では、主にロンドンの国立古文書館、議会公文書館および国立肖像画ギャラリーにおいて、ヨーリス・ヘルドルプに関する史料の調査を行った。これにより、特に1640年代以降の活動に関する史料を入手することができたのに加え、複数のネーデルラント出身の風景画家たちとの接点を示す興味深い史料を見つけることができた。また、ルーヴェン・カトリック大学のカトレイネ・ファン・デル・スティッヘレン教授と面談した際、本研究の概要と進捗状況を説明し、芸術家とネットワークの問題を扱った最近の博士論文など有用な参考文献をご教示いただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、ベルギーでの古文書調査を進めることができた他、イギリスでの古文書調査にも着手することができた。時間の都合上、オランダとドイツの調査は次年度に回さざるを得なかったが、2箇所に集中した結果、史料収集と平行して解読作業にも十分な時間を充てることができた。また、当該の問題に詳しい研究者と面談し、入手すべき最新文献や連絡を取るべき研究者などを紹介していただいたことで、今後の作業の具体的な見通しを立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の調査を通じて、ヘルドルプ一族を取り巻く人的ネットワークに関する史料が着実に集まりつつあるが、それらは未だ断片的な「情報」の域にとどまっている。今後は、それぞれの史料に関して、より詳しい背景を調査し分析を深めることにより、ヘルドルプ・ホルツィウスおよび息子たちの画家としての活動という文脈の中に位置づける作業を行っていく。 今年度は、引き続き、収集した史料の解読・分析を行うとともに、初年度に手をつけることができなかったメルヒオール・ヘルドルプに関する史料の収集を、ケルン歴史古文書館をはじめとするドイツの古文書館や大学において行う予定である。 また、初年度に調査を行ったヨーリス・ヘルドルプの場合は、肖像画家であったことは知られているものの、体系的な作品調査が行われておらず、その作風の変遷や画業の全体像は明らかになっていない。これに対して、文字史料からは、様々なネーデルラント移民の芸術家たちと交流があったことが明らかであり、それが作品制作に影響を与えた可能性はきわめて高い。このため、史料調査と平行して作品調査を行う必要があると考える。これに関しては、すでにコートールド美術研究所ウィット・ ライブラリーと連絡を取って、作品の所蔵先一覧などの資料を入手しているため、順次、実見調査や写真の入手を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
・5月のベルギー滞在時、現地の知人の自宅に偶然空きがあり、知人の好意により宿泊させてもらうことができたため、予定していた宿泊費がかからなかった。 ・ハイシーズンを避けたことにより、通常より航空費を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、本務校の業務の都合上、夏季休暇時にまとまった調査期間を設けることが困難である見通しとなった。このため、8月~9月に予定していた1ヶ月間の調査を短縮して9月上旬以降の3週間とする代わりに、6月にも約2週間の調査を行うことを予定している。当初1回の予定だった海外調査を2回に分けるため、渡航費が増えることになるが、前年度の繰り越し分を充てることによって可能となる見込みである。
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