研究実績の概要 |
本研究は、シュルレアリスムの国際化における創造的変容について、主に日本とイギリスにおける受容の問題をめぐって比較考察することを目的としている。 今年度はとくに、日本のシュルレアリスムを「外部」の視点から相対化し、理解を深める試みとして、イギリスの研究者とともに多くの意見交換を行った。「アヴァンギャルド」という語の使用法の違いや、パリ、イギリス、日本のシュルレアリスムの政治性に関する比較考察、日本のシュルレアリスムにおける瀧口修造の位置付け、第二次世界大戦後のシュルレアリスムの受容と展開など、テーマは多岐にわたる。そうした議論や考察のなかで、古賀春江、福沢一郎、北脇昇、靉光、岡本太郎、北園克衛など個別具体的な画家や詩人にたいする理解や評価の違いだけでなく、「シュルレアリスム」ということばが指し示す内実や輪郭をあぶりだすための方法論の違いも明らかとなった。こうした違いを丹念に拾い、その理由や背景を考察することが、各々の場におけるシュルレアリスムの独自性や創造的受容を浮かび上がらせるための端緒となった。 以上の研究成果の一部として、瀧口修造および日本のシュルレアリスムに関する論が以下の共著に収録される予定である。Encyclopedia of Surrealism, Michael Richardson (ed. in chief), Dawn Ades, Krzysztof Fijalkowski, Steven Harris, Georges Sebbag (eds.), Bloomsbury, forthcoming 2017.
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