研究課題/領域番号 |
26770053
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
水野 裕史 熊本大学, 教育学部, 講師 (50617024)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 鷹図 / 鷹狩 / 野行幸 |
研究実績の概要 |
本研究は、武家社会において「画鷹」がどのような機能を持って受容されたのかを迫ることを目的とする。以下の二つを研究の柱とした。 【1】画鷹の悉皆調査 鷹が描かれた絵画資料については、中世末期から近世初期の作例が数多く存在するものの、これまで体系化されていない。また、その中には、未紹介の作例も多く、そのため鷹図の悉皆調査を実施することとした。平成26年度は、福岡市博物館や宮内庁書陵部、徳川美術館などにて調査を実施した。 【2】鷹狩との関連性 武家にとって鷹狩は、鍛錬の一環であり、また地方で行うために情報収集の手段となっていた。そのため鷹狩とは武家にとって重要な行事であり、そこで用いた鷹を描く行為には何らかの意味があるものと考えられた。そこで鷹狩と鷹図の関係性について調査することとしたのである。平成26年度は、宮内庁書陵部と京都大学総合博物館に所蔵されている鷹図関連の資料群を調査した。その結果、鷹図の成立と展開には、平安時代に遡る宮中の鷹狩行事が関連していたことを明らかにできた。その成果は、論文「宮内庁書陵部蔵「鷹狩図」と復古大和絵」(『熊本大学教育学部紀要』63号、2014年)として公表し、あわせて2014年11月に九州藝術学会にて「鷹狩図の成立に関する一考察」として研究発表を行った。 加えて調査の過程で、これまで紹介されていない作例を見出すこともできた。特に天正19年の豊臣秀吉の大鷹野を絵画化した狩野永納筆《秀吉鷹狩絵巻》の発見は特筆される。この作例から近世における鷹狩図ならびに鷹図の展開に秀吉の大鷹野が影響を及ぼしていると考えることができ、武家社会における鷹図ならびに鷹狩図の受容の背景について迫りうることができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、鷹図が武家社会の中で、どのように受容されたのかを解明することが目的である。そのため、武家社会の背景にあった鷹狩の儀式が、鷹図ならびに鷹狩図に影響を与えていたことを明らかにできたことは重要な成果である。 また初年度は研究成果として1件の論文の公表、2件の口頭発表を行い、順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
鷹図の研究は、これまで体系的にあまり進んでおらず、そのため鷹図そのものの資料紹介や位置づけがなされていないものが多くあった。このような現状を踏まえ、初年度に調査した資料や今後調査するものも含めて資料紹介を論文や学会等にて積極的に行うとともに、その歴史的な位置づけを試みたいと考えている。 加えて、近世における鷹図と鷹狩図に大きく影響を及ぼしていると考えられる豊臣秀吉の大鷹狩について、その絵画化されたことの意義にまで言及する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査対象であった所蔵期間への申請が遅くなり、調査日程が次年度にずれたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に調査を実施し、適正に使用する予定である。
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