研究課題/領域番号 |
26770054
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
豊山 亜希 国立民族学博物館, 現代インド地域研究研究拠点, 拠点研究員 (40511671)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インド / 商家建築 / 植民地美術 / マールワーリー / 公衆衛生 / 日印貿易 / タイル |
研究実績の概要 |
今年度は研究課題実施初年度にあたり、当初計画どおり北インド・ラージャスターン州シェーカーワーティー地域におけるフィールドワークに加えて、イギリスにおける関連資料の調査を実施した。 平成26年8月20日~9月4日にかけて実施した資料調査は、スコットランド国立図書館(エジンバラ)と大英図書館(ロンドン)において、本研究課題の調査対象である植民地インドの商家建築に関する同時代の言説を把握するため、都市計画や公衆衛生に関する報告書などの一次資料を網羅的に閲覧調査した。 この資料調査によって得られた知見をもとに、フィールドワークの実施地域として当初計画のシェーカーワーティー地域に加えて、当該地域の商家建築の施主が経済活動を展開し、同様の建造物を建てていた旧英領インド首都のカルカッタも含めることとし、平成27年2月12日~3月4日にかけて現地調査を行った。具体的な調査内容は、シェーカーワーティー地域の複数の集落において、植民地期の商家建築(ハヴェーリー)について集落内分布図を作成すること、構造的・様式的特徴に基づく造営年代の比定を行うこと、写真と概略平面図およびスケッチによる基礎資料を作成することであり、順調に調査計画を遂行することができた。またカルカッタにおいても、シェーカーワーティー地域出身商人(マールワーリー)が造営した商家建築や寺院について、同様の方法論を用いて基礎資料を作成した。 さらに調査成果をエジンバラ大学南アジアセミナー(平成26年10月)、日印共同シンポジウム(平成26年12月)といった国際学術会議のほか、国内の複数の研究会においても発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画は、シェーカーワーティー地域における商家建築の基礎資料作成を主な内容としていたが、実際の進捗状況としては資料調査の成果に基づいて、シェーカーワーティー地域出身者が故郷と経済活動拠点において同時に建てた建造物を調査することができた。このことによって、研究目的であるインドの多元的アイデンティティの歴史的形成を解明するための、具体的な知見を得ることができた。また今年度の研究内容を踏まえて年度末には学会誌への論文投稿を行い、研究成果の公表という観点からも、研究計画が順調に進展しているものと自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題実施2年目にあたる平成27年度は、当初計画どおり南インドにおける植民地期の商家建築についてフィールドワークを実施する予定である。初年度の調査成果を鑑み、ここでも施主の故郷と経済活動拠点というふたつの調査地域を設定可能であり、それによって、研究目的であるインドの多元的アイデンティティの歴史的形成を、より実体的に理解することが可能であると想定している。南インドの場合、施主の経済拠点はシンガポールやマレーシアなど東南アジア各地に分布しているため、フィールドワークをインドと東南アジアの二度に分けて実施することも視野に入れる。また、初年度に実施したカルカッタの商家建築に関しては、毎年当該都市において開催されるヒンドゥー祭礼「ドゥルガー・プージャー」に際して、内部を一般に公開する場合が多く、その機会に詳細な構造調査が可能であることが判明したため、その実施を行うことも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィールドワークとそのデータ整理に係る人件費および謝金の支出がなかったことにより、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、7月に国際学会International Conference on Asian Scholarsの参加(オーストラリア・アデレード)、8月に資料調査(イギリス・ロンドン)、10月と平成28年2月にフィールドワーク(インド・東南アジア)を予定しているため、旅費の出費が当初計画よりも多額になることを想定している。そのため、前年度に生じた未使用額については、今年度の旅費に充当して適正な執行を行う。
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